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事例057 高齢者の引っ越し

デイサービスで働いていた頃、こんな家族がいました。

認知症で、物忘れや出来ないことが増えた高齢の親が心配で、地方から自分たちの家へ呼んで一緒に住むことにしたご家族です。
しかし、田舎の家から高層マンションに移り住むことになった母親Tさんは、生活に慣れることが出来ず、物忘れだけでなく被害妄想や昼夜逆転が増えるようになってしまいました。「田舎へ帰りたい」「なんで帰っては行けないのか」と、昼夜問わず外へ出ようとするようになりました。


デイサービスを利用する決定的な理由になったのは、
Tさんが「買い物へ行きたい」と一人で外へ出ようとした時、認知症もあるし足腰がわるいため一人では外出させられない、また、家族が忙しくてTさんのペースに合わせて買い物することはできないと判断し、「買いたいものがあるなら、言ってくれたら買ってくるよ」、そう家族が話した瞬間、Tさんがキレたのです。

そして、「私はなぜそんなことすらさせてもらえないのか、こんなにされるなら死ぬ!」といって、高層マンションのベランダから身を乗り出し飛び降りようとしたそうです。


親のことを思って同居を決めたのに、生活になじんでもらえなかった悲しさと、Tさんの認知症が進みどうしたらいいのかお手上げ状態で、ご家族は苛立ちが募っていました。


Tさんは、デイサービスに通い始めるようになって、外出の機会が増え、キレることはなくなったようですが、家族への不信感は消えず、デイサービスの利用中も家族の悪口をよく話していました。

認知症の症状を受け入れられない家族との歪みが大きくなっていったのです。


デイサービスの職員としては、双方の思いを受け入れて、Tさんには少しでも新しい街に慣れて頂き、楽しく満足出来る時間を多く持ってもらいたいので、一緒に街を散歩したり買い物に行ったり、色んな活動に参加してもらいました。

ご家族の方へは、認知症の症状に対する対応方法を提案したり、デイサービスを使いながらなるべく穏やかに暮らせる方法を一緒に考えていきました。


昨今、地方に住む高齢の親を呼び寄せて生活するという家族が増えてるそうです。
核家族化が進んでいるこの時代、今後はますます増えると予想されます。

高齢者が環境を変えることは、鬱(うつ)や認知症を発症するリスクが高いとされています。
また、既に症状が出ている場合、進行を早めてしまうとも言われています。
しかし、だからやってはいけない…と言うのは、世の中の現状を適切に見ているとは思えません。
新しい場所へ上手に移行出来れば、安心して生活することが出来るはずです。


では、どのようなことに気をつければ良いのか。
環境を変える際に出来たらやっておきたいこと、それは“急激な変化を避けること”です。

●変えなくてもいい所は残しておくこと
例えば、カーテンやタンスなどの使い慣れた家具、昔から使い続けているものは持っていくとよいです。もし可能ならば、本人の部屋からトイレや台所などの導線が似ている環境に出来たら良いと思います。

●人間関係・コミュニティーを断絶させないこと
友人や親戚にも協力してもらって、意識的にコンタクトがとれる配慮をしてもらったり、新しい環境でもコミュニティーを作れるよう、趣味の継続の出来る場所や同じ年代の方が集まるサークルなども把握しておくと良いです。環境を変えるまでの準備期間を長くとっておくというのも良いかもしれません。

●周囲の環境に慣れるまで家族がしっかり支えること
初めのうちは特に、何か困ったことはないか、ストレスは感じていないか気を使ってあげると良いと思います。家族が助けてくれるという安心感を持ってもらうことで、新しい世界へ踏み出す前向きな気持ちに慣れると思います。


困ったり不安がある時は、自治体の福祉課や地域包括支援センターに相談するのも良いと思います。様々なアドバイスをくれたり、地域の情報を提供してくれます。
せっかくの家族との生活に、孤独を感じてしまうような環境を作ってしまわないような配慮が必要ですね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Fri,  29 2016 20:32
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