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事例055 事故のその後

皆さん、初詣は済みましたか?
今回は、ある年のデイサービスでの初詣のお話です。


私の勤務していたデイサービスは、隣に小規模多機能型施設も併設していて、その年は両施設が開所して初めて迎えるお正月。

「みんなで初詣に行きたい」という利用者様の声を受けて、合同で車に乗って近くの神社へ初詣に行くことになりました。

そこは市内で最もにぎわう神社の一つで、人の出入りが多いので、普段の外出よりも付き添う職員の配置を多くして出かけました。

神社へ着くと少しですがお参りに列が出来ていたので、みんなでまとまって並びます。
順番がまわってくると、元気な利用者様はご自分で階段を上りお参りします。
でも半分くらいの方は杖を使っていたり車いすに乗っていますから、お賽銭までの階段は職員が付き添って階段を上り下りします。


お参りが終わった方を見守りしながら、これからお参りする方の介助を行ない、バタバタしながらなんとか全員が無事にお参り終了。
利用者様も「これで今年も気持ちよくスタート出来るわ!」と大喜びです。

近くに停めてある車までみんなで戻ろうとしたその時。
あれ?一人いない!?
一番足腰のお元気な男性がいなくなっていたのです。


神社の周辺や、神社に面した通りを一通り探しますが…いない!
最後に目撃していた職員は、その男性は一番最初にお参りし、後の利用者がお参りしているのを待っている間に、おみくじコーナーや境内にある大きなイチョウの木をながめていた。でも気がついたらいなくなっていた、と話します。

男性は認知症を持っているので、もしかしたらお参りが終わった後、周辺を散策している間にみんなで車で来たことを忘れ、「自分はここにどうやって来たんだろう?どうやって帰るんだろう?」と思ってしまい、神社を出て行ってしまったのかもしれません。

とにかく、施設へ連絡。家族へも連絡。
施設内の職員は事務員さんも含めて総出で捜索チームを作り、市内の各方面をローラー作戦で捜索を始めました。神社のすぐ脇は大通りに面しており、さらに川も流れていて危険が多いのです。
お参りに行った時間は14時過ぎ。そうこうしていると日が暮れてきます。

結局一時間くらいしてからでしょうか、まだ日も落ちきらないうちに、捜索している職員から「川の土手沿いを歩いている所を発見しました」と連絡があり、無事にご自宅へお送りすることが出来ました。


施設で働いていると、様々な事故に遭遇します。

注)介護業界では、こういう事例のことを「事故」と呼びます。
利用者様が迷子になった、と言い換えると事故という言葉は大それたものかも知れませんが、利用者様の生活を預かる介護の現場にとっては重大なケース、ということで事例の大小問わず事故と呼ぶのが一般的です。

事故を防ぐために事前にリスクマネジメントをしっかりしておくことは最も重要なポイントですが、
もしも事故が防げず、起きてしまった場合にどのように行動するか、対応策を考えておくこともとても大切です。

初詣の例では、人出の多い神社へ行くから普段より職員を多く配置したことがリスクマネジメントのつもりだったのですが、逆に(誰かが見ているだろう)と隙を作ってしまったと後々反省し、以後、外出の際の職員数は、見守りがしっかりと出来る人数で出かけるように見直しました。さらに、見守りを担当する利用者様を職員一人ひとりに明確に割り当てて、行動を共にすることを決めました。

その事故から数年が経ちますが、その後は一度も事故なく初詣の外出行事は行われています。


しかし最近、様々な施設での、「事故のその後」の話を聞いていると、残念だなと思うことがあります。

例えばある施設で、朝食のパンをのどにつまらせる事故が起こってしまった。
それをきっかけに、その施設では食事にパンが出なくなった。

またある施設では、お餅は喉に詰まらせるリスクが高いので、お正月にも提供しないと決めている。

こんな風にです。
一般的な生活として、たまには朝にパンを食べたい時もあるでしょうし、お正月は持ちを食べなきゃ始まらないという方もいらっしゃるでしょう。
当たり前の生活、習慣や風習などが、リスクマネジメントを重要視し過ぎる為に排除されてしまうのはとても悲しいことです。


これからまた一年、皆さんの施設ではどんな行事や企画が行なわれるでしょうか?
季節を感じたり、地域によって様々な風習を取り入れながら、利用者様の生活のお手伝いをしていきたいですね。

一つ一つの出来事をしっかり職員たちで話し合って、利用者様の生き甲斐や満足を高めることが出来たら、身体的なケアだけでなく精神的な部分のケアにもなり、施設全体の質の向上に繋がっていく気がしています。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  14 2016 08:00
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