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事例集005 「出たい…」

80代の男性、Yさんはアルツハイマー型認知症です。
デイサービスで過ごすことに慣れることができず、すぐに帰りたくなってしまいます。
意思を伝えることが難しく、「帰る」「あっち」「どこ」など、単語で意思表示します。

いつも、少し散歩をして気分を変えたり、ドライブに行ったりなどして、なんとか夕方までのデイサービスの時間を過ごしていました。

その日のお昼、食事を食べ終わるとYさんは、
落ち着かない様子で「出たい…」と玄関の方へ歩いていきました。
希望通りYさんの歩く方へついていきながら、外へ出ることにしました。

私が働いていた施設のすぐ隣には、中高一貫の学校があります。
道路には校庭が面しており、部活の朝練の時間から体育の授業、
夜遅くまで部活動の生徒がにぎやかに運動している姿が見えます。
朝夕は登下校の生徒でいっぱいです。

さて、そんな学校の校庭沿いを歩き出してすぐ、突然、Yさんがズボンをもぞもぞ触り出し、

Yさん 「便所…」
私   「では、すぐに戻ってお手洗いに…」

そんな会話も彼の耳には入りません。
もう間に合わない。とばかりに、ベルトを外します。
ズボンとパンツを半分下ろしています。
いわゆる半ケツ状態です。

まずい!

ここは学校の校庭のまさに目の前。
ハッと気がつき校庭に目をやると、いつもにぎわっているはずの校庭には誰もいません。
たまたま、その時間帯は体育の授業もない時間帯だったようです。

(珍しい…良かった…でも、生徒が出てくる前に施設に戻らなくては…)

そんな私の思いとは裏腹に、パンツをおろしたいYさん。それを必死にとめる私。

私   「学校の校庭前だから、なんとか我慢できませんか!?」
Yさん 「大が…」

(え〜〜〜〜!?)

これは戻ることは不可能と判断し、彼のズボンをなんとか押さえながら施設へ電話し事情を説明。
すぐに車いすを持ってきてもらうことに。Yさんもなんとか我慢してくれています。

(チャイムが鳴って生徒が出てきたらどうしよう…。)

車いすが来るであろう方向を向いたまま、ズボンの端を握り合ったまま一歩も動けない私たち。
私にとっても、Yさんにとっても、スローモーションのように長い時間に感じられたと思います。


その後、施設の方から、笑いをこらえながら走って車いすを持ってくるデイサービススタッフ。
後から聞いた話では、緊急の事態ながら、道のど真ん中で若手女性スタッフの私がおじいさんのズボンの上げ下ろしを押し問答している様が妙に可笑しくてたまらなかったと…

なんとか車いすで急いで施設へ戻り、無事に用を足すことができました。
Yさんが言った食事の後の「出たい…」は、『外へ出たい』ではなく『うんちが出たい』だったのだ。
そしてトイレを探していたのだ。
よく考えたら、いつもよりそわそわしていたよな、と後から反省したのでした。

それ以来、いつものことだから…と言葉の意図を勝手に判断しないことを気にかけるようになったし、もしかしてこっちの意味なのかもしれない…と、一言から予測する行動パターンをいろいろと提示出来るようになれたように思います。

とにかく、間に合ってよかった。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Fri,  30 2015 01:17
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