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事例046 死ぬまで元気で

私の勤務するグループホームでのお話。

3フロアあるホームなので、各階で担当のスタッフが決まっており、私は2階を担当しています。
時には、施設内でイベントがあるときやシフトの都合上、担当ではないフロアに手伝いに行くこともあります。

1年前、1階のフロアに新しい入居者様が入りました。
関西生まれで、田舎の話をするのが大好き。物腰がとっても柔らかく、優しいおばあちゃんです。
健康に気を遣っていて、太極拳が習慣とのことで、私が1階へ手伝いに行った際にはいつも教えてくれました。
「私は、死ぬまで元気でいたいの。」
おばあちゃんの口癖でした。

その方には、不正出血を繰り返す、ある大きな癌がありましたが、
年齢を考え、本人、家族の意向で、手術は行わずに通院治療をしていました。
1年前に出会った頃は、病気の辛さなど微塵も感じさせない生活ぶりでした。


ある日、何ヶ月ぶりかに1階へ手伝いへ行くと、おばあちゃんの歩行がふらつくようになっていました。でも、ゆっくりご自分で歩いています。
たまにしか手伝いに行かない私のことはすっかり忘れてしまっているようで、私が、「こんにちは!今日は2階からお手伝いに来ました。」と声をかけると、「あらいらっしゃい。よろしくね。」と、いつもと変わりないやさしい表情で迎えてくれました。

私も安心して、今日もおばあちゃんと色々話をしようと、隣のイスに腰掛け、「体調は、お変わりないですか?」と声をかけました。
すると、「ありがとう、私は死ぬまで元気でいたいと思っているのよ。」と、いつもの返答。

(相変わらずだなぁ。)
そう思いながら、ふとおばあちゃんを見た時。

笑顔の頬に、一筋の涙がつーっと流れました。
悲しいような、思い詰めいているような表情では全くなく、いつもの笑顔に涙が流れているのです。

なんだか分からないけれど、胸にぐっと来るものを感じながら、私は話を続けました。
今日は、いつもより少し長くおばあちゃんとの時間を過ごそう。勝手にそう思っていました。

後から、その時すでに「今年いっぱいは持たないかもしれない」と、医師から言われていたことを聞きました。

スタッフは、明らかに弱っている身体を気遣いながらも、おばあちゃんの希望である「死ぬまで元気に」を叶えるために、なるべく他の人と区別をしない、干渉しない、トイレ介助も入浴介助も必要最小限に、出来ることは最後までご自分でやって頂きながら見守っていました。

その時から数ヶ月。
11月某日。
おばあちゃんの人柄に添うように、穏やかに、別れが来ました。
看取ったスタッフの話では、眠るように息を引き取ったのだと。

「私は、死ぬまで元気でいたいのよ。」と笑顔で涙を流したあの時の光景を、私は忘れることが出来ません。

おばあちゃん、私の中のあなたは、元気で優しい表情のままですよ。

安らかに、ご冥福をお祈り致します。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Fri,  13 2015 20:27
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