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事例集004 くるくるぱー

若年性認知症の60代のKさん(女性)とお散歩に出かけたときのお話です。

Kさんはご主人と二人暮らしをされていましたが、
ご主人が食事の支度やうたた寝をしているときに、こっそり外出をしてしまうことが増えてきて、
デイサービスに通われることになりました。

いったん外出してしまうと、自宅の場所が分からなくなります。
そうして迷っているうちにトイレを我慢できず、近所の家の庭で用を足してしまったこともありました。

ご主人の介護負担を軽減するため、私が働いていたデイサービスに通い始めましたが、
「好きな時に外出できない」と泣きわめき、玄関やドアを蹴飛ばしたり叩いたり、激しく怒ることもありました。

ご機嫌の良いときはみんなに話しかけたりして笑顔で過ごされていますが、
言葉遣いは誰に対しても「あのさー」「〜じゃん」と、子供に返ったような言葉遣いをされました。

これも認知症状の一つです。


ある日、私から散歩にお誘いし、外に出かけることになったので、彼女はとても上機嫌でした。
お散歩コースの川沿いをしばらく歩き、釣り人がいることに気がついた彼女はこう話しかけました。

「ねぇねぇ、おじさーん。何がつれてるの〜?」

釣り人はびっくりした顔をして振り向きましたが、
彼女を見た瞬間に聞こえないフリをし、彼女の問いかけを無視しました。

「聞こえないのかなー」と、寂しそうに彼女が歩き出した瞬間です。
釣り人はもう一度振り向き、いっしょにいた私に向かって怪訝な顔でジェスチャーを投げてきました。


<その人、頭、くるくるパー>


そんな人の呼びかけに返事をしても仕方がない、と言うことだったのか。
それとも単純に、どういう人?という意味だったのか。

そのジェスチャーの真意は分かりませんが、その時の私はあまりの予期せぬ出来事に唖然とし、
何も言うことが出来ず、前を歩き出しているKさんの後を追いかけることしかできませんでした。


この出来事があって、お年寄りや病気を抱えた方々が地域の中で【共に生きる】ということについて、
私たち介護関係者がやらなくちゃいけないことがまだまだたくさんある、とあらためて気づかされました。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  22 2015 08:00
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