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事例043 “お姉さん”の顔

グループホームに入居しているおばあちゃんMさん。
弟さんがよく面会に来られます。

Mさんは、ほとんど全ての動作に介助が必要で、食事もスプーンを持つのがやっと。
表情はなく、会話はこちらからの話や質問に、答えられる時と答えられない時があります。
話が理解できない時があったり、理解できても返答するまでに時間がかかったり、言葉が出なかったりします。

弟さんが面会に来ても、Mさんのそばにただ寄り添い、ほとんど話をせずに帰ることがほとんどです。

ある日のおやつの時間。
私がMさんのおやつを食べる介助をしていると、弟さんがやって来ました。
Mさんの顔がパッと明るくなります。
私も久々に弟さんにお会いしたので、Mさんと3人で一緒に雑談することに。

先日、フラダンスのボランティアさんが来たことを弟さんに報告すると、
「姉は、高校の頃ウクレレにハマってね、姉の隣が俺の部屋だったもんだから、いつもうるさくてさ!上手ならまだ聞けるけど、素人の下手な音楽聞かされて、もううんざりしたもんだよ。」
弟さんの話に、Mさんは顔をくしゃっとさせて笑います。

私「弟さんは音楽とか興味ないんですか?」
弟さん「俺は、フランク永井とか好きだなぁ。ちなみに俺は、一般人でも一位二位を争う、芸能通だよ!」

Mさんは眉間にシワを寄せて、(また始まったわよ、ごめんなさいね)、というような顔で私を見ます。
弟さんは、大物歌手の結婚離婚のエピソードや、ヒット曲が世に出るまでにどんな人が携わって出来たか、主題歌の映画の俳優や物語などなど…次から次へと話してくださいました。
あっという間に30分くらいが過ぎ、まだまだ話そうとする弟さんに、何か言いたげに聞いていたMさん。

Mさんに、どうしましたか?と尋ねると、
「も、も、もう十分よ」
と一言。

弟さんもわたしも、フロアにいたみんなが笑います。

弟さん「いやいやごめんごめん、久々に話が出来たから嬉しくてさ。ここじゃ、いつもあんまり雑談する人いないでしょ。あんたは次いつ出勤だい?また話しに来るよ。」

そういって弟さんはニコニコしながら「また来るよ!」と言って、帰って行きました。

その後、Mさんは私に言います。
「弟が、ごめんなさいね…」

「いいじゃないですか!」といいながら、私は別の嬉しさを感じていました。
Mさんが、弟さんが来たことで、とても表情豊かになり、やんちゃな弟を見守るような“お姉さん”の顔になっていたことです。

入所施設で働いていると、様々な面会場面に出会います。
いつもは”入居者様”としかみれていなかった方々が、誰かの母だったり、夫だったり、家族の一人なのだということをあらためて感じさせられます。

その度に、入居者様自身のことだけでなく、ご家族の思いや満足のためのお手伝いも出来たらいいな、という気持ちを再認識するのです。

介護の仕事。
それはまさに親孝行、家族孝行のお手伝いなんだと思います。

Mさんの弟さんが次はどんな話を聞かせてくれるか、お会いするのが楽しみです。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  22 2015 08:00
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