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事例042 事故から学ぶこと

先日ある施設の訪問中に、転倒事故が起こりました。

私とその施設の見学の担当者が廊下で話をしていると、後方の食堂から『ドーーーン!』と音が聞こえ、慌てて振り向くと、おじいちゃんが車いすごと真横にひっくり返っていました。

少し違和感を感じたのは、横転したのには珍しく、身体は少しも投げ出されること無く、腕は胸の前で組んだまま、きっちり車いすにはまったままでした。
音から考えると、かなりの勢いで横転したように聞こえました。
転倒の状況を見ると、頭を強く床に打ち付けたのではないかと思います。

見学担当の職員さんが、慌てて「○○さんが転倒している!」と駆け寄ります。
何かできないかと、私も駆け寄りました。

別のスタッフも到着し、車いすごとおじいちゃんを持ち上げます。
とりあえず外傷はありませんがでしたが、確認のため居室に連れて行かれました。

「さっき見たときは姿勢の保持はちゃんと出来ていたのに、クッションもいれたし…」と、スタッフさんが言います。
(いつも姿勢保持が難しい方なんだな、何が原因だったのだろう…)と思いながら、連れて行かれるおじいちゃんと車いすを見ていて、気がついたことがありました。

おじいちゃんは、大柄ではありませんが、背が高い方。
スタッフさんの話の中から想像すると、座位姿勢の際は時間が経つと、左右のどちらかに傾く為、日常的に傾いた側にクッションをはさみ、姿勢を保持しているようでした。
ADL(日常生活動作)は全介助で、自走は出来ないとのことで、タイヤの小さい介助用車いすを使用していました。

そんな状況から考えると…
身体に対して車いすが小さく、アームレスト(肘掛け)の位置が極端に低いように見えました。

車いすは、歩行に障害がある方にとって日常的に使用するものです。
私たちが日頃、靴や洋服を選ぶように、一人一人に合ったものを使用しなくては行けません。

例えば、女性がハイヒールを履き続けていると、自然と外反母趾になりやすくなったりするように、身体は環境に合わせようとします。車いすも、身体に合わないものを使い続けていると、姿勢が悪くなったり、食事の嚥下(飲み込み)が悪くなったり、むせ込みが起こったりします。それが原因となって様々な機能低下が連鎖反応のように起こってくるのです。

車いすのアームレスト(肘掛け)は、姿勢を保持する為に大切な調整箇所の一つです。
上下に高さを変えられるようになっています。
低すぎるアームレストでは、上肢を保持することが出来ません。

この転倒事故後、すぐにおじいちゃんはフロアから個室に誘導された為、しっかり観察した訳ではないので断定はできませんでが、車いすが少し小さく見え、アームレストもかなり低いように感じた点をスタッフの方にお伝えしました。


施設では、事故が起こった際は「事故報告書(事故の現況概要、対応方法、検討課題など)」を書きます。
利用者様の身体状況やスタッフの見守り体制だけでなく、日常的に行われていた環境づくりを再度見直すなど、様々な視点から一つの事故の要因を探してくことが大切だからです。

さらに「事故報告書」の他に、「ヒヤリ・ハット」という書式もあります。
事故が起こりそうな “ひやっ!” っとした出来事から、事故が起こるかもしれない要因を見つけ、事故につなげない為にスタッフの“気づき”を促す書式です。

ハインリッヒの法則、というのがあって、1件の大きな事故の裏には29件の軽微な事故と、300件のヒヤリ・ハットが隠れていると言われています。

たくさんのヒヤリ・ハットに気づくことができ、事故を未然に防ぐことが出来ると良いですね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  15 2015 09:17
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