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事例041 心のケア

音楽健康指導士として老人保健施設を訪ね、懐かしの歌や体操のレクリエーションを行った時のことです。

ちなみに、「老人保健施設」とは、リハビリテーションを中心とした医療サービスを提供し、在宅復帰を目的とする施設で、入所期間は原則3ヶ月間まで、とされています。

レクリエーションが終わり、帰り支度をしていると、一人の入居者さんが話しかけに来てくれました。

「今日はありがとう!楽しかった!歌も久々に歌ったわ。好きなのよ!!」

とても表情豊かに話しかけてくれました。その方と少し話をすることに。

お名前を聞くととても珍しい名字の方だったので、出身地を聞いたりしているうちに、昔のことや今の住まい、家族や趣味の話など、どんどん話してくださいます。
(お話好きなんだなぁ…)と思いながら、色々話しているうちに、施設に入居することになったきっかけや病気に対する気持ちなどを、話してくださいました。

「病気をする前は、趣味が沢山あって、カラオケや社交ダンス、ボーリングなんてマイボール6個も持ってるのよ!
今となっては脳梗塞の後遺症のせいで言葉もうまく話せないし、歩くことさえ出来なくなってしまった。ここにはもう2年いるの。主人は早くに亡くなって、家族はたまーにしか会いに来ない。さみしいものね。でも、趣味を一緒にやっていた友達は良く訪ねてくれるのよ!それで元気をもらってる。

ここにはそう長くはいられないらしいわね。でも、行き場がないのよ。家族は、今後私が退院した場合のことを話し合ってくれているみたいだけど、迷惑になるだけな気がして情けない気持ちでいっぱい。ここでの生活は、リハビリの時間が終わってしまったら、後は自由よ。でも、一人じゃ散歩さえできない。職員さんも忙しそうにしてるしね。部屋でぼーっと過ごすか、食堂でテレビを見るくらい。たまに季節の行事があるときやボランティアさんが来るときは楽しみよ。だから、今日は久々にあなたのレクリエーション楽しかったわ!懐かしい歌も思い出した。全然考えなかったけど、歌くらいは歌えるようになりたいと思ったわ!」

このお話を聞いていて、以前、ある病院で働いている理学療法士の方が話してくれたことを思い出しました。

「病院で毎日、いろんな方の個人的なリハビリを行っていますが、それ以外にも大切なことがあります。『リハビリ以外の時間をどう過ごすか』です。」

その話はさらにこう続きます。

「入院中でも、リハビリ以外に刺激があったり、希望や楽しみが創造出来る方とそうでない方とでは、リハビリに対する意識も変わるし、回復期間も変わります。より前向きに過ごせる人の方が、回復が早いことが多いのです。例えば、『今は車いすだけど、歩けるようになって、毎年参加していたマラソン大会を目標に頑張りたいんです!』とかね。リハビリ以外の“心のケア”もとても大事だと思っています。その人が、何を目標にリハビリに励むのか、共に探し出すための時間が必要だったり、信頼関係作りだったり。忙しさにかまけて、なかなか実践出来ないのが実状なのですがね…。」


“心のケア”

今回、私が老人保健施設で出会った方は、初めて会ったのにも関わらず、私に今の思いをぶつけてくれました。
最初はお話好きの方なのかな?くらいにしか思っていませんでしたが、話を聞いていくうちに、今の暮らしや今後の生活について、複雑な心情があるんだということが分かりました。そんな複雑な思いを、スタッフでもなく同じ入居者でもなく、関係のない、でも受け入れてくれる誰かに聞いてほしかったのでしょう。

そしてそんな時に、
私がたまたまレクリエーションに伺って、久々に懐かしい歌を聴いて、口ずさんで、普段にはない楽しみがあって、これなら出来るかもしれないという目標を自ら自然に見つけられたのではないかと思います。

病気になっても介護が必要になっても、小さなことからでいい。
前向きに生きることを想像出来る。そんな生き方のお手伝いをしていきたいと感じました。

先日、介護がテーマの、ある舞台を見ていて、「“忙しい”とは“心”を“亡くす”と書きます。スタッフの皆さんが、心を亡くしてどうするんですか。」という台詞を聞いて、胸を突かれたような気がしました。

皆さんは、普段どれくらい“心”に寄り添えていますか?
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Fri,  09 2015 09:34
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