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事例033 おばあちゃんの言葉

私の勤務していたデイサービスでは、近隣の小学校の学童クラブの生徒との交流会を行っていました。

小学生がデイサービスを訪れて、お年寄りの皆さんと折り紙をしたり、工作をしたり、反対にデイサービスで学童クラブを訪れて、お年寄りの皆さんが生徒たちから様々な質問を受けたり、お互いの場所を行き来していました。

デイサービスで学童クラブを訪れたある日のこと。

デイサービスから5人のおじいちゃんおばあちゃんが伺いました。そのうちの最年長は90歳で、車いすですが、お話が好きでとっても威勢のいい、江戸っ子のおばあちゃんAさんでした。

その学童クラブでは、小学1年生から3年生の生徒たちが放課後を過ごしています。
学童クラブに入っていくと、たくさんの子供たちでフロアがいっぱいです。
それはそれは賑やかで、おじいちゃんおばあちゃんたちは「ずいぶん元気だねー!」と圧倒されています。

さて、交流会の始まりです。
学童クラブの先生が「みんな静かに!おじいちゃんおばあちゃんに挨拶して下さい!」
というと、いつもと違った行事にテンションが上がった子供たちは、割れんばかりの声で
「こんにちはーーー!!!」と挨拶してくれます。

早速質問コーナー。事前におじいちゃんおばあちゃんに聞きたいことを考えていたようで、
先生が「質問ある人!」と言うと、「はい!はい!はい!はい!…」と、たくさんの生徒たちが手を挙げ、おさまりが効きません。
なんとか先生が、「みんなもう少し静かに!○○ちゃん!」と、当てます。
次の質問でも同じように、子供たちが割れんばかりの声で先生にアピールし、先生もタジタジです。
最初は「元気だわね。」と笑顔で見ていたおじいちゃんおばあちゃんも、「先生も大変だわ。」と、苦笑い。

先生が「みなさん、おじいちゃんおばちゃんたちが来てくれているのだからもう少し静かにしましょう!十分聞こえていますよ。」と、子供たちをなだめますが、少し経つとすぐにまたうるさくなります。先生も声を張り上げて、叱っていたその時です。


それまで黙ってみていた90歳のおばあちゃんが突然!

「こら!あんたたち!!!」
と、大きな声で話しだしました。

突然のことにスタッフの私たちも、学童クラブの先生も、今まで散々騒いでいた子供たちもあっけにとられて、Aさんに注目します。


そこに続けてAさん。

「あんたたちは子供なんだから、元気いっぱいで結構!ただね、世の中には【けじめ】って言う言葉があるんだよ。知ってるかい?騒いでいい時は思い切り騒ぐ。でも、お客さんが来たりきちんとしなきゃ行けない時は、静かに人の話を聞くもんなんだよ。特に、先生の言うことはしっかり聞かなきゃダメ。学校ってのはそう言うもの。【けじめ】をつけて、過ごさないと行けないよ!分かったかい!」


自然と子供たちから「はーい。」という返事が聞こえます。
それから、子供たちはあっという間に静かになって、先生の言うことを聞いていました。

無事に、その日は交流会を終了しました。
子供たちのことだから、今回のことも忘れてまた賑やかに先生を困らせているのだろうと思っていましたが、意外な反応がありました。


しばらくしてからの、学童クラブの先生のお話です。

「あのことがあって以来、子供たちの学童での過ごし方が変わりました。良く話を聞いてくれるようになりましたし、少しうるさくなっても、おばあちゃんは皆さんに何と言っていましたか?と聞くと、すぐに子供たちから【けじめ】!と、反応があるんです。あれから、この学童のテーマが【けじめ】になりました。あの時、おばあちゃんに教えてもらったことが、子供たちの印象にとっても残ったようです。ありがとうございました。」


最近の社会は、人の子供を注意することや親以外の人から注意されることが少なくなっています。
しかし、Aさんが生きて来た時代には、当たり前にあった風景だったのではないでしょうか。

学童クラブの子供たちにとってはもちろん、先生や私たちにとっても得るものがある、世代を超えた交流がそこにありました。

Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Tue,  18 2015 00:18
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