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事例032 Shall we dance.

変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)があり、杖をついて歩くのもやっとの、おばあちゃん。
90歳で認知症がありますが、県営住宅で一人暮らしをしています。

物がないとか膝が痛いとか、離れて住む娘に1日何度も電話をかけます。
外に一人で出れば、自分の家がわからなくなり、他のうちの玄関に入り込んでしまいます。
真夏でも、下着を何枚も着込み、毛糸のセーターを来ていたりします。

日中だけでも安心出来る場所で過ごさせたいと、家族の意向で、デイサービスに通うようになりました。

変形性膝関節症とは、膝の関節軟骨がすり減り、膝を曲げ伸ばしする動作に痛みが生じるようになり、重度化すると骨そのものが変形したりし、安静にしていても痛みが生じ、日常生活にも支障が生じる病気です。


このおばあちゃん、デイサービスのお迎えでは「膝が痛いから行きたくない」が朝の挨拶代わりで、なんとか話を聞いたり、「車で行くから、エレベーターに乗るまで頑張りましょう!」と励ましながら、家を出るのに毎日30分以上はかかります。

一歩踏み出すたびに「いでででで…」「なんでこんな思いをさせるのよぉ〜!」「やっぱり行くのやめようかな…」と言います。

デイサービスにやっとのことで到着してもお風呂は面倒くさい、風呂場まで行くのも辛い、体操もめんどくさい、膝が痛いから出来ない…とほとんどしません。


そんな、おばあちゃんですが。

ある日、施設の夏祭りの練習で、盆踊りの男性の先生がデイサービスに来た時のことです。

盆踊りなんてやらないわよ!
そんなことしてる場合じゃないの、帰りたいのよ!
と、機嫌悪そうに完全拒否のおばあちゃんに、「この先生は社交ダンスもされるんですよ。」とスタッフが先生を紹介すると、顔色がパッと変わり…

おばあちゃん「昔はよくホールで踊ったわよ!ワルツとかさ、ルンバとかさ!」

私「え?そうなんですか?」

おばあちゃん「そうよ!いまは、足がこんなになっちゃって出来ないけど、いまだって覚えてるわよ!」

その声に、先生がこうおっしゃいました。
「私がリードします。是非、ワルツを踊りましょう。踊れますよ。」

と、おばあちゃんに手を差し出すと、握っていた杖をポイと放り投げて…

先生のリードに身を任せ、素晴らしいステップを踏んで、デイサービスのフロアを踊って見せます。

スタッフ一同、心の声で
(えーーーっ!膝は!膝!膝痛いんじゃなかったの!!さっきまで痛い、痛い騒いでたのに、ワルツ踊ってるしー!)

と、思うと同時に、ダンスが痛みを忘れさせていることに驚きました。


若い頃、男性にリードされて踊った感覚を思い出しているのだろう…そして、まだ覚えている、楽しいという思いが痛みよりも先行しているのだと思いました。

少しの間のステップでしたが、なんと満足なお顔をされていたことか!

一人暮らしで、寂しさもあり、いつも何かを心配していて、膝が痛いことで、行動も消極的になっていって。
自分らしさを忘れかけていたところに、思いがけないダンスの誘いだったのでしょう。

久々のダンスに興奮し、やりすぎて後から痛みが増すことがあるのでは!?と、心配でドキドキしましたが、そのようなこともありませんでした。

「病は気から」という言葉がありますが、まさにこのことだなぁと思わされた出来事でした。


私たち介護士は、病をもった方と触れ合う機会が多くあります。
自信を失ったり、諦めていたり。
それぞれに抱える悩みや思いを、少しでも楽しく過ごせる!普段の悩みも忘れて過ごせた!と感じてもらえるような手助けが日々出来たらと思っています。

Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  06 2015 10:42
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