介護の現場エピソードや、現在の社会問題について情報を発信中。

メニュー

事例集024 きっかけは出身地

「母を田舎から呼び寄せたのですが、友達もいないし、家から出ないし、このままじゃ母がダメになってしまう気がして…」と、私の勤めていたデイサービスに助けを求めていらした娘さんがいらっしゃいました。


きっかけは、あるとき娘さんが一人暮らしの母親Aさんに会いに田舎に帰った折に、近所の方から母親についてこんな話を耳にしたことでした。
「最近Aさんの行動が変よ。あんまり外に出ないし、同じ話を何度もしたり。」

この情報がきっかけで心配になり、娘さんは夫婦で相談してAさんを浦安の自宅へ呼び寄せたのでした。
最初はいやがった母親Aさんをなんとか説得し、いっしょに暮らし始めたのですが、夫婦には小学生の子供が2人いて、学校行事や部活動などに忙しく、慣れない土地で戸惑う母親に何もしてあげられない生活でした。

そのうち母親Aさんは家から出かけなくなり、人付き合いもなく部屋に閉じこもりがちになっていき、悩んだ末にケアマネージャーに相談し、デイサービスの利用を勧められました。


デイサービスを利用するためにはまず、相談員が自宅に伺い、契約とともに家族の状況やご本人のことについて情報収集をします。相談員が訪問した際には、母親Aさんの受け答えもスムーズで、「デイサービスか…いってもいいかもね…」と話していたそう。

しかし、いざ利用日になると、「今日は腰が痛いからいかない…」という日が続き、一向に利用出来る気配がありませんでした。

母親のAさんはそのときまだ60代。
若くしてデイサービスを利用するということに抵抗がある上、慣れない土地で、知らない人たちと一日を過ごすのは抵抗があっても仕方がないのかも知れません。

私は、それでもせっかく出会ったご縁なので、どんな場所か雰囲気だけでも見に来て頂くきっかけはないかと思い、娘さんとお話をしていると、私と母親のAさんとの共通点があることに気がつきました。

出身地です。Aさんと私の生まれが同郷で、しかも同じ市内の隣町だったのです。
すぐに相談員から同郷の職員がいることを伝えてもらい、私が迎えに行くことになりました。

玄関先で出会ったAさんは、田舎の訛りがぬけておらず、私も自然につられて同じような話し方になってしまいます。
さらに、隣町だからこそ、学校の名前や近くのスーパーの名前、駅の名前など、話すこと全てがお互いに懐かしく感じるものでした。

「懐かしい、こんな話が出来るなんて思ってなかった、こんなところで出会うとはね!」
と、Aさんの表情が見る見るうちに明るくなっていくのが分かりました。
Aさんはすぐに私の名前を覚えてくださって、「小子内さんがいるから行くわ。」と、デイサービスに来てくれるようになりました。親子ほども歳が離れていても、時には友人のように話をさせてもらったことを今でも嬉しく思っています。

通い始めるとあっという間。
顔見知りの仲間もできたり、車いすの方に気を遣ってくださったり、昼食後の皿洗いを一緒に手伝ってくださったり、とても活動的に過ごしていらっしゃいました。

たまたま私と出身地が一緒だったことで、Aさんの気持ちの緊張がほぐれ、デイサービスに通うことで日常の過ごし方が変わり、ご家族の心配も解消出来たのでした。

皆さんも、慣れない土地で同郷の人と出会うと嬉しいですよね。
慣れ親しんで来た土地を離れ、不安を感じながら生活をしていたAさんにとっても、人一倍の喜びだったのではないかと思います。

私の母も田舎で一人暮らし。
Aさんと話をするたびに、実家の母の姿に重ね、ちょっぴり会いたくなる。
そんな日々でした。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  11 2015 08:00
  • Comment: 0
  • Trackback: closed

0 Comments

Post a comment