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事例集002 『俺は飛べる!』

ケアハウスに勤めていたころ、入居されていた80代のおじいちゃん。
脳梗塞の後遺症で片麻痺。
杖をついてゆっくり歩き、話をしようとするとよだれがたれてしまいます。
でも、お話するのが大好き。
ご自慢は、軍隊での武勇伝です。

ある朝のこと。
早番の私は、食堂で朝食の準備をしながら、ご入居の皆様を待っていました。

50名入居の施設です。
いつも最後の方にいらっしゃるそのおじいちゃんは、その日も朝食の時間が始まってもすぐにはいらっしゃいませんでしたが、いつものことなのでさほど気になりませんでした。
しかし、しばらくして朝食が終わる時間になってもまだいらっしゃいません。

(まさか!倒れているのでは!?)

あわててその方の居室へ。
当時、介護経験1年目だった私の心臓は悲鳴をあげていました。

(なにかあったらどうしよう…)


恐る恐るその方の居室のインターホンを押しました。

「はーーーい。」

と、寝ぼけたような声が聞こえたので、私の早とちりか…とほっとしながら「寝坊しちゃったんですか?」と冗談を言いながらドアを開けました。

すると!
目の前に、苦笑いしながら顔面血だらけのおじいちゃんが!?
ベッドの脇には、いつもベランダに置いてある物干竿がひん曲がって横たわっている。

え??どういう状況??洗濯を干そうとして転んだ??いや、洗濯物はないし…

とりあえず救急対応の手続きをとりつつ、笑い続けているおじいちゃんに話を聞く。

私:「一体どうしちゃったんですか?」

おじいちゃん:「いやー、飛べると思ったんだよー。」

私:「は???」

おじいちゃん:「だからね、これをね、この上から飛べると思ったんだよー。」

私:「え〜!!!???」

軍隊での、昔の体力自慢をするのが大好きなおじいちゃん。
夢で見たのかやる気がわいてきたのか、ベッド横に置いた物干竿を、ベッドの上から飛び越せると思って実践してみたらしいのです。

本人のイメージでは綺麗に着地するつもりだったのでしょうが…。

彼の本気の顔に、「何考えてんの!できるわけないでしょ!」なんて言えませんから、
「これはむずかしいでしょ〜〜!私でも無理だよ!!!」
「それにしても骨折とかしてないといいけど…」
「もうこんなチャレンジはやめてね」

と、彼を気遣いながら苦笑いする、驚きの朝でした。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  08 2015 23:44
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