介護デザインプロジェクト

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事例263 父とのゴルフの約束

男性Aさんの父親との関わりについての話です。

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Aさんは30代で会社では役職のある仕事をしています。
実家には車で2時間くらいの距離には住んでいますが、年に一度、お盆かお正月に帰るか帰らないかです。
普段は母親からたまにメールが来るくらいで、父親との関わりはほとんどありませんでした。

父親は60歳を過ぎて、一度は仕事を退職しましたが、まだ働けるとのことで、週に何度か手伝い程度で仕事を続けていました。

そこまではAさんも知っていたのですが、昨年65歳を過ぎて完全に仕事を辞め、家でのんびり過ごしていることをしばらくの間知りませんでした。

それを知ったのは、母親からのメールでした。
「お父さんが心配なの。会社をやめてから、何にもしないでぼーっとしてて。別人になっちゃったみたい。お正月は帰って来るの?お父さんと少し話ししてあげて。」

Aさんは母親からのメールを見て、会社をやめたんだ。暇しているんだろうな。くらいにしか感じなかったと言います。

そして、今年のお正月、実家に帰って本当に驚いたと言います。
これまでの父親の姿とは全く違った姿がありました。

普段あまりお酒を飲まなかった父が昼間から飲んでいて、ヒゲも剃っておらず、食べては寝ての繰り返し。酔っ払って居間でイビキをかいて寝ている姿に、母は「私が何を言ってもダメなの。酒ぐらいしか楽しみがない、って言って。」と、どうしようもできない様子でAさんに助けを求めてきたのだそうです。

Aさんは父の唯一の趣味のゴルフを思い出して、
「ゴルフとかには行かないの?」と母親に尋ねてみると、今年、父親のゴルフ仲間の大親友が突然病気で亡くなり、それから行かなくなった。ということが分かりました。

仕事を辞め役割がなくなったこと、大親友をなくしたこと、これが父の全てのやる気をなくした原因でした。

Aさんは、自分に何ができるのだろう。と考えましたが、あまりいい考えは浮かばず、たまには父とゴルフに行ってみてもいいかな。ということぐらいしか思い浮かびませんでした。
Aさんは会社仲間と付き合いでゴルフに行くことはありますが、父親と行った事はありません。
いい機会だと思いましたが、いざ父親を誘ってみようかと思うと、なんとなく気恥ずかしい気持ちがあったと言います。

夕飯の際Aさんから、
「今度さ、ゴルフ行かない?会社でも行く機会が増えたし、練習もしたいんだよね。」
そう父親に話してみると、
「俺も最近やってないからな、でもいいぞ、いつにする?」
と返事が返ってきました。特に表情も変えず、どう感じたのかもよくわからない感じでしたが、ひとまず約束を取り付けた感じで、言葉少なに会話が終わってしまったと言います。

父親とのゴルフの約束は次の月の休みの日になりました。
正月が終わり、仕事に戻ったAさんにまた母親からメールが届きました。

母のメール
「お父さんがね。玄関で素振りをしたり、ゴルフの練習に行くようになったよ。この前は買い物に行って、新しいゴルフウェアを買ったりしてた。楽しみにしてるんだと思う。ありがとうね。」

Aさんは、少しは父の為に何か出来たのかもしれないと、少し嬉しくなったと言います。
頻繁には行けないけど、定期的なゴルフの時間を通して、少しづつ父との距離を縮めていけたらいいなと思っている、とも話していました。


仕事や家庭で役割を失ったり、大切な人を失ったり、年齢を重ねて行くとそのようなことが増えていきます。それによって、人生において不安になったり活動意欲がなくなったりすることも少なくないと思います。

そんな時家族に何ができるのか、という事を考えた時、迷うことも多いのではないかと思います。
Aさんの話を聞いていると、大げさな事じゃなくてもいいんだな、日常の少しの楽しみを増やす事だって大きな一歩になるんだな、そう感じました。
Posted by おこないちかこ on  | 0 comments 

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