介護デザインプロジェクト

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事例207 孫に褒められて

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風邪をひいて体調を崩していた80代のおばあちゃんの話です。

それまでは施設で行われる、週1回の絵はがきの会を楽しみにしており、日頃から、次はこれを書いてみようかしら…とネタ探しをしながら外を散歩するのが日課でした。

元気が取り柄のおばあちゃんでしたが、風邪をひいてからというもの、すべてのやる気を失ってしまい、ご飯もいつもの半分以下、日中のほとんどを居室内で過ごし、ほとんど人と交流しなくなりました。風邪が治っても、気持ちが落ち込んでしまい、週1回の絵はがきの会にも参加しなくなりました。

職員は元気を出してもらおうと、以前に書いて貰った絵はがきを壁に飾ったり、綺麗な景色の見えるところに散歩に誘ったりしましたが、興味を示してもらえません。

職員が悩んでいたある日、おばあちゃんのもとにある訪問者がありました。
おばあちゃんの息子さんと、小学校低学年の女の子のお孫さんです。
小学生のお孫さんは初めておばあちゃんの施設を訪問したようで、「綺麗だね」「暖かいね」と言いながらキョロキョロ見回しながら入って来ました。

おばあちゃんを見つけるやいなや、「おばあちゃん!元気だった?」と駆け寄ってきます。
そして、職員が部屋の前に飾った、おばあちゃんが書いた絵はがきを見つけたお孫さんは、
「これおばあちゃんが書いたの?すっごーい!」と釘づけでした。

それを聞いておばあちゃんはにっこにこの笑顔になって
「これはね、毎週絵はがきの会って言うのがあってね。好きなお花とか、景色とかを絵の具を使って書くのよ。自分で好きなものを見つけるのが楽しいのよ。一緒にお外に行ってみる?」
とお孫さんに声を掛けました。

最近めっきり外出の機会が減っていたので、これは良い機会だと思い、私たち職員も、ぜひ行って来てください!と送り出しました。お孫さんと手をつないで、息子さんに見守られながら外出していきました。

あまり長い距離は歩けないので、20分程して戻って来たお孫さんの手には、どんぐりが握られていて、絵はがきを教えてもらうんだ!と言って、おばあちゃんの隣に座りました。

しばらく絵はがきの会にも出席していなかったおばあちゃんですが、お孫さんに言われたらやってみるしかありません。
「まずはね、どんぐりをよ〜くみて、どこを描こうかなって考えるの、それから黒い絵の具で縁取りをしてみてね。それから、薄い色から塗っていくのよ…おばあちゃんは黄緑を塗ってみようかな…」

そう言うとお孫さんが
「ええ?どんぐりは茶色だよ!緑じゃないよ!」

そう言われたおばあちゃんは、
「よ〜くみてごらん、どんぐりの先の部分、少し黄緑色しているでしょ。どんぐりは茶色になる前は綺麗な黄緑色なんだよ。」

お孫さんは
「そうなの!?おばあちゃんすごい!」
そう言って、おばあちゃんの使っている色を真似しながら、絵はがきを書いていったのでした。

せっかくなので、書きあがった二人の絵はがきを並べて壁に飾ることにしました。
その日からと言うもの、昨日まで何にもなる気がなく過ごしていたおばあちゃんがウソのように、ご飯も食べて、散歩にも出て、絵はがきの会にも参加するようになりました。

お孫さんがきたことを知らずに後日出勤したスタッフは、「おばあちゃんどうしたの!?すごい元気になったね!」と声を掛けていました。
するとおばあちゃんは、
「あのねこの間、息子と孫がきたのよ。孫がね、おばあちゃんの絵はがき凄いって、褒めてくれたの。なんだか、元気でちゃって。また頑張ろうって思っちゃった。」
そう言って、元気に笑っていました。

風邪は薬で治りましたが、落ち込んでしまった気持ちは薬では治りませんでした。
気持ちを回復させてくれたのは、お孫さんの「おばあちゃんすごーい!」の一言でした。

介護を行う中で、スタッフや娘息子の話には気持が動かないが、お孫さんの言葉が響いた、と言うことがたまにあります。
子供の純粋な言動が大人に気付きをもたらすことがあったり、おばあちゃんのように元気をもらえることもあるんですね。

ひとつのどんぐりを見つめながら、並んで絵を描く姿を見ていると、とても暖かな気持ちになりました。
Posted by おこないちかこ on  | 0 comments 

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