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事例196 介護の悩み、会社に言えますか?

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介護の勉強会で出会った、男性Aさんの介護経験談です。
Aさんは独身で、母親を介護しながら会社員として働いていました。
母親は昨年肺炎でなくなりましたが、10年前に脳梗塞で倒れてからずっとAさんが介護を続けてきました。

その10年前、Aさんは40代でバリバリの営業マンでした。
会社ではとトップを取って表彰をされたり、教育係の責任者を任されたりしていたそうです。
自分の評価が上がれば上がるほど、“会社や上司、同僚に弱みを見せてはいけない”
そう思うようになっていたと言います。

ある日仕事中に、母親が脳梗塞で倒れた知らせが入ります。
倒れてから時間が経ってしまっていたようで、後遺症は重く残りました。
半身麻痺で車椅子生活が始まりました。

母親は一人暮らしでしたが、もう一人では生活出来ません。
一人っ子のAさんが同居することになりました。

Aさんの暮らしは激変しました。
実家からの通勤のため、通勤時間が2時間になりました。
日中、介護サービスは利用しても、着替えや食事、トイレなどを介助したりしなければなりません。
最初は、『母親のため、しょうがない。今までしてこなかった親孝行…』と割り切っていたものの、仕事と介護の両立にストレスが溜まって言ったと言います。

ここで邪魔をしたのが、会社でのAさんのプライドです。
“会社には弱みを見せてはいけない”
何故か、介護をしている自分が “社会から見た弱者” に感じてしまっていたのだそうです。

介護のせいで責任ある仕事を任されなくなるのではないか。
かわいそうな人、という目で見られるのではないか。
そんなプライドが邪魔をして、会社にはしばらく言えませんでした。

しかし、ある日直属の上司から「最近なんか疲れてないか?周りもそう言っている奴がいるぞ。」と指摘されました。
営業の成績も落ちていないし、気丈に振る舞っていたつもりが、日頃のストレスは隠せなかったようです。

それをきっかけに、会社には全部打ち明けました。

上司は、実は自分の親も介護をされているが、お姉さんがやってくれていて、あんまり関わっていないから申し訳ないと思っている。今までとは処遇は変わらないが、大変な事があったらストレスを抱える前に相談してほしい、という話をしてくれたそうです。

会社の仲間の中には、実は自分の親も施設で介護されているんです。と言って話しかけてくれる人や、〇〇とかいうサービス知ってる?と言って、介護の情報を持って来てくれたりする人もいました。話を聞きながら、介護に携わっている人の多さに驚いたと言います。

さらに、若い社員達が、自分の介護の経験談を聞いて、“親”について考えるようになったと言います。

全てを打ち明けた事で、会社が理解してくれていると思うと、気持ちがスッと楽になり、介護に対しても前向きになれたと言います。

Aさんは言います。
ニュースで介護離職とか色々言われているけど、ちゃんと会社に相談したのかな?とか、変なプライドが邪魔してないかな?とか、会社の理解はあるのかな?とか色々考えちゃいます。
俺は幸い、いい会社に勤めていて、介護への理解のある会社だったけど、そうではないところもまだまだあるんだろうと感じています。

自分は働きながら介護をして来た経験者として、微力ながら世間に発信できる事がある気がしてるんです。
子育てしながら働く。介護をしながら働く。
こういう環境はもはや当たり前。だからこそ、そういう人に対するバックアップや社会の意識改革が必要なんですよね。

いくら国や自治体が、そうしたいです、といっても、現実の生活にそういう人がいるということがわからなければ、誰もそこに意識を向けないんです。
だから、最初の自分のように介護を負目に感じたり、必要以上に頑張ったりする必要はなく、隠さず自分のことをオープンにすることも社会の変化の一部だと思ってます。

Aさんは、介護が終わった今、仕事を続けながら介護の勉強会に参加したりしています。
会社でも、もしかしたら自分と同じ境遇の人が出てくるかもしれないし、制度のことや色々学んでおきたいから。と言っています。

介護をしている人の心理というものは、外から見ている以上にデリケートなことが多いです。
Aさんの上司のように、変化に気づいて声をかけてあげられる方が、大きな救いとなるときもあります。

“介護をしていることを、オープンにする”
体験者の思いを聞いて、改めて納得させられました。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  27 2018 08:00
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