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事例187 認知症ケアの難しさ

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「私のにはイクラがのっていない!」

利用者と近くのレストランへ外食へ行った時の事。
利用者Aさんは鉄火丼を、Bさんはイクラののった海鮮丼を頼みました。

みんなが楽しみにしていた外食です。
好きなものを選びましょう、ということで、それぞれ別々なものを注文したのでした。

利用者Aさんは認知症の方です。
短期記憶の保持が難しく、ものごとをすぐに忘れてしまいます。
この日も、楽しんで自分でメニューを選んだは良いけど、それを忘れてしまったのです。

それぞれの所に注文の品が届くと、Aさんが突然怒り出しました。
「どうして私のどんぶりはイクラがのってないの!」

スタッフが「Aさんが鉄火丼を選んだからですよ」と言っても、その事実が記憶に無いAさんは、私だけ別のものにさせられたといって不機嫌です。
せっかく楽しみにしていた外食を満足して欲しかったので、結局、イクラののった海鮮丼を頼んでいたスタッフが、私のでよかったら…と交換したのでした。


またある日、スイカ割りをしようと施設のみんなで集まりました。

利用者にも体験してもらおうと、スイカを割る棒をみんなで持って体験しました。
Aさんに順番が回って来て、「Aさん、次やって見ましょうよ!」と声をかけると、
Aさんは「私はこういうの不得意だから、やめとくわ」と、断りました。

ひとしきり楽しんだ後、「楽しかったですね。」とお茶を飲みながら他の利用者と話をしていると、Aさんが怒り出しました。
「みんながスイカ割りをやらせてもらっていたのに、私だけさせてもらえなかった」

スタッフが、「Aさんが得意じゃないからやめとくって言ったんじゃなかったでしたか?」と話すと、「私はそんなこと言っていない。」と自分が言ったことを覚えておらず、また不機嫌になるのでした。


認知症ケアにおいて、“利用者の気持ちを尊重する、選択をしてもらう”と言うことは基本なのですが、そこから先が難しい事があります。選択の仕方、選択した際の環境によっては、“自分の選択”では満足を感じられないことがあるのです。

かといって、すべてを介護者側が決めて、コントロールしてしまえば良い、ということも違います。


外食の際に、「Aさんは他の人と同じものを頼んでおけば文句言わないから、こちらで注文しましょう。」と話しているスタッフがいました。

そういう事ではなく、Aさんの場合、“選らべる”という楽しみは残しつつ、その選択によって、ひとりだけ別行動をしているようにならないような事前の声掛けや、環境を整えるのが私たちの仕事なのです。


メニューを選ぶ際に
「お隣のBさんは、〇〇を注文しましたよ」「(写真を見せて)他の方はこちら、Aさんはこちらですよ」
という確認の声をかける。

選んだ注文を紙に書いてご本人にお渡しする。などの工夫があっても良いかもしれないですね。

認知症ケアで必要なのは、臨機応変な判断力や、表情などから気持ちを読み取る観察力、思いやりや気遣い、そしてそれらが伴ったアイディアです。

もちろん簡単なことではありませんし、本人を思って出したアイディアが失敗に終わることもあります。
それもすべてひっくるめて、施設であれば職員間で、在宅であれば家族間で事実を共有し、それがまた次のアイディアにつながると良いですね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  26 2018 12:44
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