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事例集001 「かぁちゃんは偉大だ」‏

九州出身の70代男性。
学校の先生をしていた過去があり、定年後は奥様と一緒に地域の学校行事やラジオ体操の先生をしたり、活動的に過ごしていました。

認知症の発症で、私の働いていたデイサービスに通うことになりました。身体的にはとってもお元気でしたから、最初、車いすや杖をついた他のご利用者を気遣ったり、お散歩に出るとどこかへ走っていってしまったり、スタッフを待ち構えて「わ!」と驚かせたり、スタッフのお尻をぺしっとたたくなど、優しくてチャーミングで、少しスケベなおじさんで名が通っていました。

お若いこともあり認知症の進行は早く、2〜3年たつと症状は変化していきました。はじめはご自宅でも脳トレドリルをしたり体操をしたり、症状の緩和につとめていましたが、文字を読むこと・書くこと・集中することが難しくなっていきました。

大好きな軍歌を口ずさむと、周りがびっくりするぐらいの大声で歌い始めたり、デイサービスでは落ち着かないのか「かーちゃーーーん!」と叫びながら廊下を泣き叫んで歩いたり、感情のコントロールができず、ご自分の意にそぐわないことがおこると手が出るようになりました。

そんな中印象的だったのは、スタッフに手をあげてしまった後のこと。ご本人は少し落ち着いたあといつも「ごめんな。」と言いに来てくれました。

ご自宅にいても「もう帰ろう」と言っては一日に何度も外出しようとしたりしていたそうでう。奥様は、なんとかご本人の外出についていこうとされるのですが体力的にも難しく、外出の際にボランティアさんを頼んでみたりしました。

しかしいざ外に出ると、知らない家の玄関に入ろうとしたり、静止がきかない状況になっていきました。

「最後まで家に一緒にいたい。」と献身的に介護されていた奥様も、周囲の意見もあり施設入所を考え始めます。

入所施設の相談員が、入所前面談のため訪問にくるという朝。
彼は横になったまま起き上がることが出来ず、緊急搬送され、そのままお亡くなりになりました。


後日、生活も落ち着きを取り戻してきたころ、奥様はご主人の遺品を整理していました。
ご主人が最後まで持っていた手帳が出てきました。
それを開くと、いつの日に書いたものかは分からないが、メモ欄にこんな言葉が書いてあったそうです。

「わしがこんなになったのに、面倒を見てくれている。かぁちゃんは偉大だ。」

奥様への最大の感謝の言葉です。

奥様は、「あんなになっても、そう思っていてくれたんですね。なんだか救われた気がしたよ。」と話してくださいました。

最後まで一緒にいたいと望んでいた奥様と、それに答えるように感謝の言葉を残したご主人。
夫婦の想いが通じ合っていたことを感じた出来事でした。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  01 2015 08:00
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