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事例167 何もしないという研修

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ある施設でのスタッフ研修の一コマです。

友人の施設では、新しいスタッフ(介護の職場が初めての方や、新人さん)が入ってくると研修日のうち、一日だけこのようなことを言います。

それは…『今日は、何もしなくて構いません。一日座っていてください。トイレに行きたくなったら、スタッフに声をかけてください。』
これが研修の一環なのです。

一日座りっぱなしで過ごすとどのようなことが起こるでしょうか?
体験したスタッフの感想は以下の通りです。
・とにかくつらい。
・気がおかしくなりそうな気がする。
・時間が気になる。長く感じる。
・お尻や腰が痛い。
・イライラしてくる。
・飽きてしまい、眠くなってしまう。
・やることがないので、人の行動が目に入る。話がよく聞こえる。
・お腹がすかない。
・のどが渇いても、自由に飲めない。
・トイレに行きたくても、自分から声をかけてから行くと思うと、少し我慢してしまう。
このような経験をスタッフにさせることには、何もせずに座っていることが与える影響を感じてもらうためにあります。
実際に介護にあたる高齢者の方たちが、そのように感じている、ということを体験するためです。

まず、座位の時間が長いと運動不足になります。それによってADL(日常生活動作)が低下したり、高血圧や肥満などの生活習慣病さらに、冷えなどの血行不良、食欲不振、便秘や不眠などにも関わってきます。長い間同じ部分が接触し続けることにより、褥瘡(じょくそう:細胞の壊死、皮膚の損壊)も起こる可能性があります。

さらに、何もやることがないと傾眠傾向になってしまい、昼夜逆転やうつになってしまったりします。やることがないために周囲が見えすぎてしまうことで、細かいことが気になってしまい、他者とトラブルになったりすることもあります。

なるべく、活動時間を増やしたいとは思うのですが…

介護施設でよくあることの一つに、“利用者が一日座ってぼーっとしている”という問題が挙げられてしまいます。
それは、利用者の意思でぼーっとしたいからしているのではなく、人員不足により、日常業務(排泄・食事・入浴などの介助)をこなすことで精いっぱいであり、利用者の希望を伺っている暇がない。または、希望を聞けたとしてもそれを実行するだけの余裕がない。

または、ぼーっとさせないために、何かをやらなければいけないことは分かっているが、何をやったらいいか分からない。または、やることは分かっているが、上手くできない、自信がないからやらない。
その他にも、転倒などのリスクを考えることが先に来てしまい、行動にうつせない。と言う意見や、単純にやるつもりがない。と言う考えもあります。

友人の施設では『ただ座っている研修』を行うことにより、利用者の感覚を体験していることから、業務の合間に誰かができることをやる、と言うスタンスではなく、皆で協力して“時間を作る”という考えに変わったそうです。

利用者の感覚を味わうという体験はよくあります、おむつを履いて実際に排泄をしてみるとか、とろみのついたご飯を食べてみるなど、私も経験があります。
経験をしてみることで、感じた思いをケアに生かせることが多くありました。

同じ体験をしてみて気持ちを知ることは、介助の技術を知ることと同じくらい基本として大切なことかもしれません。

何にもしないという体験、皆さんもいかがでしょうか?
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  08 2018 08:00
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