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事例165 高齢者施設でのピザの提供の仕方

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知人の介護施設でのお昼ご飯の話です。

知人が利用者と話をしていると、「たまにはピザでも食べたいわね!大きくて丸いやつ!」という話が出たので、昼食に宅配ピザを頼むことにしたそうです。
Lサイズの大きなピザを数枚注文し、知人の心の中では…
『今まで宅配ピザは頼んだことがないし、到着したピザを見て、見た目だけでも驚いて、満足感もアップしてきっと喜んでもらえるはず。』
そう思っていたのですが…

ピザは、知人が外出している間に届いていたようで、
さぞかしみんなおいしそうに食べているのでは?と思ってフロアに戻ると、ピザを食べたい!と言ったおばあちゃんがなんだか怪訝な顔をしています。

理由を聞いてみると
「こんなに固くて冷たくなったパンなんて食べたくないわよ。もう食べたくない。」
なぜそんなことになったのか、後からほかのスタッフに尋ねてみて理由が分かりました。

まず、ピザが到着。
大きな箱に入ったピザ4箱は、皆さんの目に触れることなく、台所に運ばれました。
そして食事担当のスタッフは、こう考えたそうです。
・何種類かの味を皆さんで分けた方がいいだろう。4枚は多いから2枚を選んで提供しよう。
・一切れが大きくて食べにくいから、少し小さくしてあげよう。

冷たいお皿に、勝手に選ばれた2つの味、食べやすいサイズに小さく切り分けられたピザは、冷めた状態で利用者の前に置かれたのでした。
ここで重視されてしまったのは、選んでもらう手間を省くことと、食べやすさです。
確かにご自分で選べない方も小さくないと食べられない方もいます。
しかし、お元気なおばあちゃんが想像していたのは、丸いピザを皆で囲んで、自分が好きなものを選んで食ベること。
私たちが普通にピザを食べる時に味わう、最初の楽しみが失われてしまったのです。

たったこれだけのこと、と思う方もいるかもしれませんが、特に食事に関しては、楽しみや喜びを感じてもらう為に、提供の仕方も大きいのです。
材料の切り方、彩り、盛り付け方、器の選び方。
その他に、目の前で焼いてくれるとか、皆で鍋を囲むとか、提供の仕方によっても食の楽しみが変わります。
例えば、鍋料理を台所で作って、取り分けた小皿を配膳しても面白くもなんともないですよね。

おばあちゃんに喜んで頂けなかったことで、知人以外のスタッフの間では、こんな会話がされていたそうです。
「ピザは提供するのに手間がかかるし、利用者にも不人気だから、もうピザを頼むのはやめましょう。」

もし、すぐに食べられるように準備をしておいて、ピザが届いたら温かいうちに皆さんの前で箱を開けて、ご自分で好きなピザを手に取って食べていたとしたら。
反応は別なものになったような気がしています。
知人も、もう少し提供の方法に工夫が必要だったのではないか、と言うことを周囲のスタッフに説明し、後日、再チャレンジしてみることにしたそうです。

施設では、理解力や身体機能等、人によって出来ること出来ないことの幅がとても大きいです。
出来ない方に合わせがちになったり、介護事故が起こらないよう、リスクだけを考えがちになりやすいです。

このことばかりに気を取られていると、私たちが普通に感じる喜びを、忘れてしまう瞬間があります。
喜びは日々の充実感に関わってきます。
食の楽しみは、多くの高齢者にとって一番に近い楽しみです。それを失ってしまわないように、提供したいものですね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  22 2018 08:00
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