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事例156 介護の相談を誰かにしてみること

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入居施設で食事介助をしていた時の事です。
ちょうど訪問看護師さんが入居者の様子を見に来ていました。

私が食事介助をしていた方は、認知症の症状で「失行」のある方です。
(失行とは…動作の仕方が分からなくなることを言います。食事の場合、目の前に食べ物があると分かっていても、手で箸やスプーンをもって、口に運んで食べるという行為ができない状態。)

私がスプーンに乗せた一口大のご飯を、下唇にちょんちょんと当てると、口を開けてくれて、物を食べることができます。咀嚼することは忘れていないので、しっかり食べることができます。「甘い」「酸っぱい」などの味覚や、「熱い」「冷たい」などの感覚もあります。
ただ、目の前のご飯が認識できない。食べるという行為ができないのです。

このように、私が食事介助をしているのを見ていた訪問看護師さんが、ぽつりとこんなことを言いました。

「こんな簡単なことなのにね」

どいうことか話を聞くと…
看護師さんは私の食事介助を見ながら、最近ご自分が担当するようになったお年寄りの家族を思い出したと話をしてくれました。
在宅で母親を介護しているその家族は、一番の悩みが、『お母さんがご飯をぜんぜん食べてくれない』ということだったようです。

その家族がどのように食事介助をしているのか様子を見させてもらうと、スプーンにのせたご飯を目の前までもっていったり、口に近づけたりしながら、「お母さん、ご飯だよ口開けて!」と一生懸命見せていますが、口は開きません。
ご家族は、「全然口を開けてくれないんです。無理やり口に入れるようなことはしたくないし。どうしたらよいのでしょうか。」と。

見かねた看護師さんが変わって食事介助をしてみました…
「〇〇さん、今日は親子丼ですよ。一口どうぞ」と言って、スプーンに軽く一杯分のせ、下唇にちょんちょんと当ててみると、簡単に口を開けてくれ、問題なく食べることができたのでした。

ご家族はとても驚いた様子で「そんなことでよかったんですね!今まで何回言い聞かせても口を開けてくれなかったんです。口を開けることを言葉でわからせようとしていました。」と言って看護師さんに感謝していたそうです。

介護士の仕事は、これまで当たり前にできていたことができなくなっていくのを介助することが多いです。
介助の仕方も、人によって、日によって、時間によって、体調によって、季節によって、環境によって、病気の進行具合によって…同じ人でも微妙に違います。
どのように介助すればよいのか。この部分の見極めは、プロの仕事と言える気がします。

今回のお話のように、悩んでいたことが、「たったこんなことでよかったんだ」と思える解決方法がある場合があります。

トイレの場所が分からず、間に合わなくて失禁が続いていたが、ドアに大きく「便所」と張り紙をしたらわかるようになった。とか、椅子からうまく立ち上がらせることができなかったが、準備姿勢を整えたら簡単に立てるようになった。
是非、小さなことでも、迷ったり疑問に感じたりしたことは、プロに相談してほしいと思います。

介護を楽にする方法は、誰かに話すことから始まる気がしています。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  21 2017 08:00
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