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事例153 介護がもとになった姉弟げんか

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「明日から別の場所に送迎に来てもらえますか?」
デイサービスにかかってきた一本の電話です。

70代の女性Aさんは、デイサービスに通い始めた最初の頃はゆっくりですがご自分の足で歩き、「行ってくるね」と大きな声で家族に告げて家を出るお元気な方でした。
性格は穏やかで、誰に対しても平等で優しい方です。
コーラスをやっていた経験があり、歌がものすごくお上手で、特に童謡の「この道」がお好きで、ソプラノのとてもきれいな高音で歌い、いつも周囲を驚かせました。

しかし病気の進行が早く、1年経つころには歩くことが困難になり、車いす上でも座位が保てなくなるほどでした。徐々に話すこともできなくなり、食事も一人ではとることが難しくなっていきました。

デイサービスで仲良くしていた友人の女性はあまりの変化の速さに、「あんたしっかりしなさいよ!私より若いんだから!ほら!」と涙目になりながら肩をゆするのでした。

冒頭に書いた「明日から別の場所に送迎してもらえますか?」は、そんな日々が続いたある日、Aさんを介護をしていたご家族からかかってきた電話です。

Aさんを介護してきたのは息子さん家族でした。
しかしこれからAさんは、息子さんではなく、少し離れたところに暮らす娘さんのところで暮らすことになるということなのです。

なぜ急にそのようなことになったのか、理由はこうです。

息子さん家族は、お嫁さん、お孫さん、皆がAさんのために一生懸命に介護をしてきました。
主にお嫁さんが介護をしていたようですが、デイサービスに行くための準備なども息子さんやお孫さんがしていたこともありましたし、Aさんができないことがいろいろと増えてくると、私たちに「こういう場合はどう対処したらいいのか」と、真剣に聞いてきてくれました。
家族みんなで支えあって介護をしていた様子が分かりました。

しかしある日、たまに様子を見に来る娘さんが、Aさんの変わりようを見て、「どうしてこんなになっちゃったの?介護の仕方が悪いんじゃないの?」というような発言をしてしまったのだそうです。

これまで献身的に介護を続けてきた息子さん家族には、とても残酷な言葉のように思います。
もしかしたら、娘さんは息子さん家族を責めるつもりは全くなかったのかもしれません。でも、一生懸命Aさんに尽くしてきた息子さん家族にとって、特に中心的に介護をしていたお嫁さんにとっては、あまりにも軽はずみな言葉に聞こえたのでしょう。

「そんなことを言うのなら、やってみなさいよ。私たちはもう一切そちらのやっていることには口を出さないし、お母さんの介護には関わりませんから。」
娘さんの発言をきっかけに、姉弟の間には「縁を切る」くらいの深い溝が生まれてしまったのでした。

デイサービスは在宅サービスです。
自宅にいる時間とデイサービスに通う時間をうまく活用して、これまでの生活をなるべく安心安全に続けられるような、身体的、精神的な支援をしていきます。
だからこそ、家族がどこまで介護できるのかをしっかり見極めるために、家族とのコミュニケーションは密に行われます。

その家族内でのトラブルはよくあります。
介護の大変な部分というのは、やっている人にしかわかりません。
お金も時間も思っている以上に使います。
知らず知らずに心の余裕がなくなっていきます。


自分は介護をやっていないが、家族の誰かがやっている。という状況の方に、やってほしいことが3つあります。

◆話を聞いてあげてください。
誰かに話すことができるというのは、ストレスを和らげ、気持ちも整理されます。

◆介護にかかるお金のことを聞いてみてください。
金銭援助がほしくても、介護をしている人からは切り出しにくい部分です。介護保険制度を利用しても、費用は思った以上にかかります。こちらから切り出して聞いてあげると、親切だと思います。

◆「もしものこと」を考えてください。
もしも、介護をしている人が倒れたら、すぐに家族間でフォローしあえる状況になっていますか?介護をしている人にとって「私が倒れたらどうしよう」という不安を持っている人はかなり多いです。やってくれている人がいるからいい、という考えが一番危険です。そこから家族トラブルが生まれることもあります。

介護をしている家族の金銭的、精神的バックアップ。
それが家族の役割でもある気がしています。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  30 2017 08:00
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