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事例143 心のバリアフリー

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突然ですが、皆さんは目の前で転倒した方がいたら、どうしますか?

先日私が体験した話です。
午前9時前ごろ、仕事先に向かうため最寄りの駅に向かって歩いていた時のことです。
ちょうど通勤時間でもあり、たくさんの人が駅の周辺を歩いていました。

駅に近づいたころ、私が歩く脇を自転車に乗った年配の男性がスーッと通り過ぎていきました。
(あ、追い越されたなー。)と思いながら、なんとなくその年配の男性を目で追っていました。すると、少し先の曲がり角で道路の段差にバランスを崩し、自転車ごと真横に転倒したのです。
バランスを崩して倒れたことと、足の上に自転車がのってしまっていて、地面と自転車に挟まれて抜けられず、しばらく起き上がれずにいました。

近くには沢山に人がいたのですが…
少し離れて向かっていた私には、周囲の人がどんな反応をしたのかよく見えました。

先を歩いていたサラリーマンらしき男性は、ガチャンと転倒する音に気が付いて振り返ったものの、歩みを止めることなく、2~3度気にして振り返りながらも駅のほうへ歩いていきました。
また、目の前で転倒を目撃したOL風のお姉さんは、驚いて立ち止まり、(どうしたらいいの?)という風に、後ずさりしていきました。
さらに、道の反対側の建設現場にいた作業員たちは、(おいおい大丈夫かよ)という風に、じっと見ているだけ。
そのほかの道行く人も、気にしながら通り過ぎていきます。

誰も助けないの?なぜ?と思いながら、私は速足で転倒した男性のところまで駆けつけました。
「大丈夫ですか?」と自転車を引き上げると、後ずさりしていたOL風のお姉さんが戻ってきて、一緒に自転車を持ち上げてくれました。
「いやいやすみません…ちょっと滑ってしまって…大丈夫です。ありがとうございます。」と恥ずかしそうにお礼を言いながら男性は自転車を引いて去っていきました。

その後、私にはもやもやした気持ちだけが残りました。
駅の近くだっただけに、急いでいた人もいたかもしれないけれど、さすがに誰も助けないとは…世の中、こんなに冷たいのだろうか…

そんな思いを抱いていた数日後、
ある勉強会で、障がい者雇用に力を入れている、渡部哲也さんという方のお話を聞く機会がありました。
渡部さんは仙台で「六丁目農園」というレストランを経営しています。
障がい者を積極的に雇用しており、一人一人の障害を知り、その人ができることを、レストランの中でできることに当てはめていくという方針の雇用の仕方です。
「適材適所」の働き方を進めていて、障がいがあっても、ずっと働き続けたいと思ってもらえるような職場を目指しているのだそうです。

その渡部さんがこんなことを話していました。
「私は精神的バリアフリーのある世の中になってほしいと思っています。日本で多く理解されているバリアフリーとは、建物の段差をなくしたりなどの物理的な障害を取り除くことを指すことが多いですね。海外では日本ほど、このバリアフリーが普及していない。それはなぜかというと、少しの段差くらいなら、近くの人が、お手伝いしましょうか?と声をかけ、手伝ってくれるんですよ。気軽に声をかけられる。これが精神的バリアフリー、心のバリアフリーです。本来生活というものはこのような助け合いによって成り立っていると思うんですよ…」

この話を聞いた瞬間に、数日前に起こった、自転車で転倒した男性を見る周囲の光景を思い出しました。

「大丈夫ですか?」この一言がかけられないのはなぜだろうか。

私たちは、小さいころから知らない人に声をかけられたらついていかない、話さない、そんな風に教えられますし、最近は危険な事件などもあって、大人でも他人にはなるべく関わらないような風潮があります。
人に対する興味や関心は確実に薄くなっています。
困っている人を見ても、すぐには手を出せないというのは、社会がそうさせているのかもしれない、とすら思えます。

しかし、テレビやイベントなどのチャリティーイベントやボランティア団体にはしっかりと、たくさんのサポーターがいます。
「誰かのためになりたい」という心は多くの人が持っているんだと思います。

“今近くに困っている人がいたら声をかけられますか?”
私も渡部さんの考えと同じく、精神的バリアフリーのある世の中になってほしいと感じました。
物理的バリアフリーが整備されても、心のバリアフリーがなければ、本当の意味でのバリアフリーとは言えない気がしています。

小さなことかもしれませんが、そんな行動の輪が広まっていけば社会は少しづつ変わっていける気がしています。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  21 2017 08:00
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