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事139 あなたの考える悔いの残らない接し方は?

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都内にある有料老人ホームを訪ねた時のことです。
80代から90代と見える入居者の方々が、午後のお茶の時間に食堂に集まっていました。
スタッフの方が私にもお茶を入れてくださったので、皆さんとご一緒して少しお話をすることにしました。

お茶を飲みながら、一番大きな声でお話をしていた女性がいました。
その方はハツラツとしていて、私には70代後半くらいに見えました。

「お元気ですね!」と声をかけると、その隣に座っていた女性が、
「あなた、この方いくつに見える?」と質問してきたので、「正直に70代後半くらいですか?」と答えると、全員が大笑い。

ご本人が「93よ!」と答えました。

本当に驚きました。
「ガハハハ!」と大きな声で笑い、背筋もピンと伸びていて、レクリエーションのカラオケも自分の番が来ると、立って歌っていました。
93歳のその女性は話し始めました。

「90過ぎるまであっという間だったわ。人生いろいろよ。今どの時代に戻りたいか?と言われたら、50代か60代ね。子育ても終わって、仕事も終わって、自由よ!70代になると身体はいうこと聞かなくなってくるし、旦那は先に逝っちゃうし。さみしいことが多くなったわね。でも今は、こんなに素晴らしい施設に入れてもらって、上げ膳据え膳で自由の身。また楽させてもらっているわ。あなたの親御さんはいくつくらいなの?」

「60代後半です。」

「そう!若いのね!実家は近く?たまには会いに行ってるの?」

「実家が遠いので年1〜2回くらいがいいところです。母は一人暮らしをしているんですが、先日用があって実家に帰って母とテレビを見ながらご飯を食べていたとき、『こうやって誰かが一緒にいて、ご飯食べたり、話したりするのっていいわね。私もだんだん年だしさ。なんだか時々不安になるのよね。』って言われました。やっぱり寂しいのかなって思いましたね。」

「一人暮らしで、娘が遠くに住んでいるんじゃ、そりゃ余計に寂しいわね。60代後半じゃ、これからのこととかいろいろ考えると思うわよ。そうねぇ、いろんな家庭があって、それぞれだから一概に言えないけど、あなたに一つだけアドバイスをするわね。“あなたが悔いのないようにお母さんに接しなさいね”。人生ほんとにいろんなことだらけ。つらいこともいっぱいあったけど、でもね、私が両親や連れを看取ったとき、どれだけ自分が看てあげられたのかっていうことがその後の自分の支えになったわ。また、そういう姿を自分の子供たちが見ていたからか、今は子供たちが私のことをしっかり看てくれてるわ。自分のしてきたことが今になって帰って来ているような、そんな気持ちね。」

近くにいたほかの入居者も、スタッフもみんな深くうなずいて聞いていました。

私は両親に対して常々思っていることがあります。

私が成人するまでの20年間。
親からおむつを替えてもらい、ご飯の食べ方や衣服の着方を教わり、社会人としてのマナーを教わりました。今となってはわがまま言ったなと思うこともあるし、意見が食い違って喧嘩したり、口をきかない時もありましたが、社会で暮らしていけるような人間に育ててもらったのは他の誰でもなく、両親のおかげだということ。

そしてその感謝の気持ちとして、せめて20年間分の親孝行くらいはしたいな、と考えたとき、例えば母が85歳で亡くなるとしたら、母は現在60代後半なので、20年間分の恩返しはもうすでにスタートしていなくてはいけないのです。
(日本の平均寿命:男性が80.75歳。女性が86.99歳。)

それに気が付いた時から、少しづつですが、実家に帰る回数や電話を掛ける頻度を増やしてはいました。でも、仕事もあるし、自分の生活があります。なかなか、思っているようには連絡が取れずにいました。

そんな中で、“あなたが悔いのないようにお母さんに接しなさいね”、という言葉は私の胸に刺さりました。

もう一歩踏み出して、母の不安を取り除く努力をしたいな、そう感じさせられました。

自分の生活や仕事とのバランスをとりながら、悔いの残らないような親孝行とは何だろうか、を考えていきたいと思っています。
兄弟や旦那さんにも相談して、家族で考える機会があってもいいなと思っています。

先週はお盆で帰省したり、家族で集まった方も多かったのではないかと思います。

“悔いの残らない接し方”。
考えてみると、 『今できる家族との時間』 がより大切な気がしてきますね。

Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  24 2017 08:00
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