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事例135 入居者同士の関係づくり

みなみ

先日グループホームに新しい入居者の女性Aさんが入りました。
周囲の利用者とどのように関係づくりをしていくのか、また、それをスタッフがどう対処できたのかというお話です。
Aさんは、認知症の為、ご自分がこれからグループホームに入居するということが理解できていません。

「田舎へ帰る」
「帰るにはどうしたらいいの?」
「歩いていくの」…

同じことを繰り返します。

それを周囲で聞いていた同じ入居者の女性たちは、

「あの人、これからここに住むのが分からないのね」
「何を聞いても同じこと何回もいうのよ」
「ちょっとおかしいわね」

数日間そのような状態を見ていて、そう噂を立てるようになっていました。

わるい噂というものは、直接伝えずとも雰囲気で、“嫌なことを言われている”ということは伝わるものです。
Aさんも、皆さんに受け入れてもらっていないという空気を察していたかもしれません。もともと食が細いと聞いていたのですが、ほとんど食事をとれない日が続いていました。

この状況を見た、あるスタッフが私に相談してくれました。
『外出レクリエーションの企画をやってみたいんです。』
なぜかというと…
施設内での暮らしは、日常動作はさほど変わりません。
かわりばえのない毎日に、かわりばえのないAさんの繰り返しの言葉。
“あの人はおかしい人”というレッテルを張られたままでは、Aさんにとっても周囲の皆さんにとっても良くない。
そう思い、イベント的に普段あまりできないことをやってみよう。
もしかしたら、Aさんの違う一面が見られたり、同じイベントに参加した経験があることで一体感がうまれるかもしれない。

そう言う思ったからでした。


もちろん私も大賛成で、皆さんの外出に付き添いすることにしました。
『3時のおやつに近くのお店に甘味を食べに行こう』という企画でした。
外出したのは、Aさんも含め4人の利用者の女性です。
Aさん以外の女性は、歩行に不安があるため車いすやシルバーカーを押しています。
Aさんは小刻み歩行ですが、何も使わずに歩けます。

Aさんはとてもにこやかで、「こっちでいいの?」と言いながらどんどん歩いていきます。ほかの方より歩きが速いので、「もう少しゆっくりお願いしますね」と声をかけながら歩いていると、それを見ていたほかの利用者が「今日はよかったわね。Aさんも外へ出られてうれしいのよきっと」と気持ちを察してくれました。

お店へ着くと、皆さんはお好きなメニューを楽しそうに選んでいます。
Aさん以外の3人はかき氷。Aさんはソフトクリームを注文しました。
注文が来るのを待っている間、利用者の一人が言いました。
「たまにはこうやって食べに来るのっていいわよね!今日は何か特別な日?あ!そうだ!Aさん、あなたの歓迎会じゃない!?そういうことにしましょうよ!」
それを聞いたほかの皆さんも「そうね!乾杯しなくちゃ!」と賛同してくれて、Aさんもにこやかです。

商品がテーブルに届くと、私が何も言わなくても利用者の一人が、「じゃ、皆さん乾杯しますよ!カンパーい!」と掛け声をかけてくれました。

会話も弾み、楽しいひと時となりました。
帰り道も、Aさんは相変わらず軽快に歩いています。

それを見ていた3人は「Aさんは歩くのが得意なのね。私たちなんかシルバーカーや車いすがないと歩けないのに、負けたわね…」そう言いながら歩いていました。

Aさんは今でも同じ言葉を繰り返したりしますが、だいぶ施設に慣れてきて、会話こそ成り立ちませんが、ほかの入居者とはよい関係を築けています。
ほかの入居者も、“おかしな人”とは言わなくなりました。

経験を共感することや、普段は見られない一面を目にできることは、コミュニケーションをとるうえでとても大切なことだと感じています。

例えば、みなさんの家族が施設に入居するとき、一緒に過ごす方々と上手くやっていけるのかどうか。
また、スタッフの方がどのようにフォローしてくれるのか、気になるところだと思います。
入居した家族に面会に行った際に、利用者同士でお話していたり、声を掛け合ったりしている光景を見られることは、家族にとっても幸せなことです。

普段の私たちの生活でも同じように、より良いコミュニケーション、関係づくりをするために、普段とは少し違った時間を過ごしてみるということも大切なんですよね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  27 2017 08:00
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