介護の現場エピソードや、現在の社会問題について情報を発信中。

メニュー

事例134 認知症の人が最後まで忘れないことは?

7c4027df97368e23a0b946d9be62afd2_s.jpg

皆さんは認知症と聞くと、どんな印象を持つでしょうか?
介護予防教室などでお元気な高齢者の皆さんに話をすることがありますが、
大概の方が “いろんなことを忘れちゃう” と一番に言います。

確かに、段階的に忘れっぽくなったり、忘れてしまうことも多くなりますが、
今回は、認知症の方でも、長く記憶に残っているものについてお話します。


私の以前の職場は、認知症対応型のデイサービスでした。
私がデイサービスをやめる際、ある利用者のご家族様から手紙をいただきました。

これまでのお礼とともに、こんなエピソードが書かれていました。

『私の母はデイサービスに通い始めてまだ1年ほどですが“おこないさん”という名前はしっかり覚えているんです。
昔のことは覚えているとよく言いますが、新しいことを覚えることができるんだな、と感心しています。
最近では、長年飼っている犬の名前や家族の名前も怪しくなってきました。
しかし“おこないさん”は忘れないんです。
ある時、母に聞いてみました。
「お母さんはなんで“おこないさん”の名前は覚えていられるの?」
すると母はこう答えました。
「優しくしてくれる人は覚えているんよ、きっと。」
嫌味でもなんでもなく、さらっと言った母の言葉を聞いて、ハッとしました。
あとは、私が名前を忘れられないように気をつけなきゃなって…』


このお手紙をいただいて、自分自身もハッとしました。
私は生活相談員で管理者でもあったので、利用者や家族と一番最初に出会います。
名前も変わっているので、覚えてもらえることは多々ありました。
しかし、「優しくしてくれる人は覚えているんよ」と、いう言葉に、なんだか改めて、自分がしてきたことを正されているような、そんな気分になりました。


「感情残存の法則」という言葉を聞いたことがあります。
体験した出来事自体の記憶をなくしても、その時の感情は強く心に残る、というものです。
例えば、いつも嫌な口をきく職員がいるとします。
認知症の人は、その人に何を言われたのか、どんな状況だったのかは忘れてしまいますが、その人は自分に嫌な思いをさせる人だということはしっかり覚えているんです。
その職員さんがいる日は機嫌が悪くなったり、その職員さんが食事や入浴の介助をしようとすると拒否されてしまう場合があります。


認知症の方が最後まで忘れないもの。
そのひとつが「感情」です。


先日、今勤めているグループホームのフロアで、書きものをするのに真剣に悩んで机に向かっていたら、そ〜っと誰かが来る気配がしました。
ハッと横を見ると、重度の認知症のおばあちゃんが、心配そうに私をのぞき込んでいました。
「もしかして心配してくれたの?」と声をかけると、「よかった〜」と言って去っていきました。

忘れていくことが多い分、「感情」の部分が研ぎ澄まされていく、そんな気がしています。
ご家族の皆さん、在宅介護でイライラすることはありませんか?
施設の職員さん、人手が足りないとイライラすることはありませんか?

たいしたことではなくていいのです。
ちょっと楽しいこと、ちょっといいこと、ちょっと安心できること、そんな出来事のある毎日の積み重ねが介護の秘訣なのかもしれませんね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  20 2017 08:00
  • Comment: 0
  • Trackback: closed

0 Comments

Post a comment