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事例集011 オセロの時間

有料老人ホームで勤め始めた時のことです。

ご入居者の身体的なケアが重点的で、少ないスタッフの人数で効率良くかつ丁寧に、お一人お一人のケアをいかに行えるか、毎日が時間と隣り合わせでした。


そんな中、ご入居者のAさんのご家族(娘)様から言われたことが、今でも私の介護に関する考えの支柱になっています。


アルツハイマー型認知症のAさんは90歳を超えていますが、オセロが大好きでスタッフとの勝負もいつも互角です。

日常のことはなんでも自分でやりたいと、洗面台で下着を洗って干したりしているお元気な方でした。


スタッフは、Aさんはオセロが好きだから少しの時間でも相手になってあげたい、と思いつつも、日常の業務に手いっぱいで、ほとんど時間をとることができませんでした。


ある日、業務がスムーズにいき、ほんの少しだけ時間が空いたのでAさんのお部屋に行ってみました。


「オセロしませんか?」と声をかけると、「あら、いいの?」と、待ってましたとばかりに素早く盤を広げます。

途中で、持ち手の黒と白が分からなくなるくらいで、教えてあげながら勝負は続きます。


私が勝つと、「あなた、まぁまぁ強いわね。」と、ちょっと悔しそうで。

Aさんが勝つと、「まぁ、こんなもんね。」と、満足そうです。


Aさんが少し見せてくれた悔しさや、満足そうなお顔がなんだか活き活きしていて、とても嬉しく感じました。




後日、Aさんの娘様とお話しする機会がありました。
Aさんとオセロをした話をすると、こう言ってくれました。


「母とオセロをしてくれたんですね!誰でもそうだけど、例えば、のんびり暮らしたいとか、旅行に行きたいとか、美味しいもの食べたいとか、【活きる事】は希望に向かっているんですよね。母は認知症だし、歳だし、できないことが増えたけど、オセロはまだ出来ます。やりたいんです。
スタッフさんはいつもお忙しそうだから、母ひとりに時間を作るなんてなかなか出来ないと思います。

でもあなたが母といてくださった時間、母は満足していたと思うんです。90歳も過ぎてますが、母にはまだまだ出来ることがあります。【活きて】欲しい。そう思っています。母に付き合ってくれてありがとう。」




たった数十分のオセロの時間が、そんなに意味のあることだとは感じていませんでした。
しかし、頂いた感謝の言葉を振り返ると、いかに貴重な時間を過ごしたのかが分かりました。

これからも【活きる】サポートをしていきたい、そう思っています。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  12 2015 08:00
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