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事例121 言葉の引き出し

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『言葉を失っていも、歌は歌える。』
施設で働いていて、幾度となくそのような方を見てきました。 以前ブログにも書きましたが、普段は「わ〜あ〜あ〜」しか言葉が出てこない方が、きちんと“カチューシャの歌”を歌たり。まったく言葉が出てこない方が “津軽海峡・冬景色”の出だしの言葉を発したり。

たとえメロディーが流れないと出てこない言葉達だとしても、言葉は脳のどこかにちゃんと残っているのだと感じます。
ちなみに、以前のブログはこちら。
事例008 百歳のお祝いにて 
事例100 その人のことを知ること


歌の体験ではないのですが、先日、グループホームで新しい発見がありました。
70代の女性Aさん。
話すことは出来ますが、言葉は基本、スタッフが話す言葉やテレビで流れている言葉を拾って、おうむ返しのように同じことを話したりします。

例えば、誰かが「元気ですか?」
と話した言葉が聞こえたら、その後ずーーっと「元気ですか…元気ですか…元気ですか…」
と、次に理解できる言葉が出るまで言い続けます。

ある日、入居者の皆さんと雑談をしていた時、日本のおとぎ話の話になりました。
一寸法師の歌があったわね?とか、金太郎ってどんな話だっけ?と、賑やかに話をしていた時のこと。
ひとりの入居者が、おとぎ話の最初は大体これよね。といって、
「むかーしむかし。」
と言ったところ、別のテーブルから、
「あるところに」と聞こえてきました。

「ん?」と、皆が振り向くと、そこには私たちに背を向けて座っているAさん。
驚いて、「Aさん!今続きを言ってくれたでしょ!」と声をかけると、「続きを言って…続きを言って…」
とつぶやきます。

もしかしてと思い、もう一度「むかーしむかし」といってみると、
やっぱりAさんが「あるところに」
と返してくれます。

これは!と想い、続けてみました。

私「むかーしむかし」
Aさん「あるところに」

私「おじいさんと」
Aさん「おばあさんがいました」

私「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは?」
Aさん「川へ…」

その続きは出てきませんでしたが、おうむ返し以外のしっかりした言葉の繋がりと、物語の記憶が繋がったことに感動しました。

さらに、繋がる言葉なら発することが出来るかもしれないと思い、ことわざクイズをしてみることに。

私「ネコに」  Aさん「小判」
私「寝耳に」  Aさん「水」
私「仏の顔も」 Aさん「三度」
続きが文章になっている言葉(例えば鬼も十八…とか。)は発することが出来ませんでしたが、簡単な単語がつづくことわざであればすぐに答えてくれました。

脳は、ほんの一部分だけしか私たちは使っていない、と聞いたことがあります。
言葉の引き出しを開ける鍵は、メロディなのか物語なのか、もしかしたら懐かしい人の声や風景が思い出させる言葉もあるかもしれません。

介護予防でも、物忘れを防ぐ為に、よく人とコミュニケーションをとりなさいとか、一人でいないで外出しなさいと言いますが、外的刺激を受けることって、とても良いことだと思います。
病気になってしまったから出来なくて当たり前とか、出来ないからしょうがないという意識を捨てて、色んな可能性を広げてみると良いと思います。

視野を広く持って、新しい取り組みをしていくことは、私たちにとっても日々のやりがいとスキルアップに繋がる大切な考え方です。
「介護を楽しく」するための一つの考え方でもありますね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  20 2017 08:00
  • Comment: 2
  • Trackback: closed

2 Comments

石黒  

よく現場でうまくしゃべれないけど
歌は歌えるという方に出会います。
その姿を見ると家族の方が喜ぶんですって

ケアの仕方は千差万別
その人にあったケアを発見出来ると
嬉しいですね

2017/04/20 (Thu) 16:20 | REPLY |   

おこない  

コメントありがとうございます!

コメントありがとうございます!
家族に喜んでいただけることは、この施設に入れてよかったなーって思っていただける一つの理由でもあります。
親孝行のお手伝いができるって、素敵です。

2017/04/20 (Thu) 18:32 | EDIT | REPLY |   

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