介護の現場エピソードや、現在の社会問題について情報を発信中。

メニュー

事例119 家族と話をしていますか?

father-393525__340.jpg
最近施設に入居された80代の男性Aさん。
息子さん家族は、施設からそう遠くないところに住んでいます。

Aさんはいつも言葉少なく、静かに過ごされています。
話すことはだいたい決まっていて、
生まれたところと、昔やっていた仕事のこと。
近くに商店街があって買い物には不便しなかったこと。
奥様は足が悪いから今どうしているかという心配。
その他は挨拶や返事程度しか話さない、もの静かな方です。

ある日、Aさんの昔の暮らしについて質問していると、普段無口なAさんが、自分から話しだしました。
それは、家族に対しての想いでした。

Aさん
「昔と今とでは、親のことを考える気持ちも変わってしまったのかな、と思うね。
俺は長男だから、親と一緒に暮らして、親が歳とったら子供が面倒みるもんだと、当たり前のように思って生きてきた。
でも、いまは、自分は自分という感じだね。
うちの息子なんか、自分のことばかりで、親がどうしていようと我関せずみたいだ。時代が変わったのかね。
古い考えなんだろうな。」

こんなに自分の思いを語るAさんは初めてで、しかも、力のこもった声に驚きました。
そこでいくつか質問しました。


私「Aさんは息子さんと一緒に住みたかったとか、面倒をみてもらいたかったという気持ちはありますか?」
Aさん「そうでもない。でも、母さん(奥様)が脚がわるいから、それだけは気がかりだね。」

私「奥様想いですね。きっと息子さんがしっかりみてくれていますよ。」
Aさん「そうとは思えないね。」

私「なぜですか?息子さんとは話をしますか?」
Aさん「そう言う気のきいたヤツじゃないから。ほとんど口きかないね。」


Aさんの言う通り、奥様は息子さんがみているわけではなく、別の施設に入居されているそうです。

息子さんやご家族も、たまに必要な書類や荷物を持って面会にいらっしゃいますが、「お父さんには何を言っても分からないから、居てもしょうがない。」と、荷物を置いてすぐに帰ってしまいます。


いままでAさんが、家族の柱としてどんな“父親”であったかどうかは詳しくは分かりませんが、親子関係に少しだけ溝があるように感じています。


親子関係の問題について、ある法律関係の情報サービス会社のアンケートによると、親子関係の希薄化、親子間トラブルは年々増えており、それが介護問題にも大きく影響しているようです。
「親子関係にトラブルを抱えている」と答えた人のうち、その原因で一番多かったのが、「精神的な苦痛を受けた」、次に多いのが「性格的に合わない」というものです。
親の介護についての質問では、「親の介護は自分がする」と答えたのは、37%でした。


また、ある保険取り扱い会社のアンケートによると、「親と今後のことについて話し合っていますか?」という質問に、68%が「何も話していない。」という結果。さらに、「親と同居したいですか?」という質問に、49%が「同居したくない」という結果でした。


親は確実に老いていきます。
“親をみる”ということが、いつかは自分の生活に関わってくるかもしれません。
それが、突然目の前に現実として突きつけられることも珍しくありません。


親子間の関係改善と行っても、トラブルの内容や確執というものは一筋縄では行かないことも多いです。
お互いに元気だからこそ、親と自分たちの今後をどうしていきたいかを早いうちから考えておくことが必要な気がしています。


今回、普段無口なAさんが初めて少しだけ家族に対してどう思っているのかを話してくれました。
施設に入所してくれたからこそ、親子の距離が出来、お互いの気持ちに余裕が生まれるということもあります。

Aさんは87歳。
息子さんも60代前後。今度はご自分の老後を考えていく頃でもあると思います。
そうなってくるとまた、親への気持ちというのも変化していくのではないかと思っています。


これからのAさんの暮らしをサポートする中で、家族への想いにどう寄り添ったら良いかを、Aさん、職員、家族が時間をかけて共に考えていくことが出来たらと思っています。

皆さんは家族と話をしていますか?
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  06 2017 08:00
  • Comment: 0
  • Trackback: closed

0 Comments

Post a comment