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事例116 家族の前では語らない想い

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介護士として働いていると、施設を利用している方から何気なく家族に対する想いを聞くことがあります。

デイサービスに通っていたAさん、料理の盛りつけを行なうと、野菜の彩りや向きをきっちりきれいに揃えてくれて、几帳面な性格でもありました。
昔はご主人が経営されている会社で人を遣っていた経験があり、よく働き「姉さん」といわれて頼りにされていた、と聞きました。

Aさんはご主人のことをとても尊敬していて、何がある時も2人一緒。
会社も夫婦で一生懸命働いて軌道に乗せたのでした。

数年前、何十年と連れ添ったご主人が突然病気で他界、気丈に葬儀などを終えた後、Aさんは放心状態となってしまい、会社の2階にある自宅に引きこもったまま、カーテンも開けず、食事もとらず、立つこともままならない姿になってしまったのだと言います。

お嫁さんによると、いままで「姉さん」と呼ばれ、人に慕われ、家族には弱音を一切吐かなかった義理母が、あんなに弱々しい姿になってしまったのを見たことがなく、とても驚き、人はこんなに変わってしまうのだと感じるほどだったと言います。

そんな姿を見かねて、息子さんが会社を継ぎ、営業を再会するようになると、Aさんも時々それを手伝ったりして徐々に元気を取り戻したのでした。


Aさんも80歳を過ぎ、会社の手伝いも難しくなってきて、日中の余暇活動の為にデイサービスに通うようになりました。

デイサービスの帰り、Aさんが必ず話す言葉がありました。
「息子もちゃんと会社を継いでくれて、お嫁さんは文句一つ言わず、おかあさんおかあさんと言って色々やってくれる。私は、皆に感謝しないといけないのよ。こんなに素敵なデイサービスに通わせてもらっているのも、家族とお父さんのおかげだと思っているのよ。本当に感謝!寝る時は必ず、お仏壇に向かって『おとうさん、おかげさまで私は元気にやっていますからね、ありがとう』と言ってから寝るのよ。」

デイサービスの帰り際にこのような言葉を言ってくれるというのを、お嫁さんに話してみると、とても驚いていて、自宅にいる時はそんなこと一度も言ったことがない、そんな風に思っていてくれているなんて知らなかったと、お嫁さんはとても嬉しそうにされていました。


施設で働いていると、思いがけない家族への想いを聞くことがあります。
自宅では言わない、感謝の気持ちや本音。
家族に伝えてあげられるといいですね。

今まで出来ていたことが出来なくなったり、覚えていたことを忘れたり、家族が介護をするということは、悲しみや寂しさなどを感じながら、それでも続いていく日常と葛藤することも多いと思います。
そんな気持ちになったとき、本人の想いを家族に伝えてあげられたら、もう少し前向きになれるような気がします。

私たちの役割はそんなところにもある気がします。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  16 2017 08:00
  • Comment: 1
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1 Comments

石黒  

家族には恥ずかしくて言えないことが
たくさんありますよね。
掛け橋となれるよう頑張らねばと
改めて思いました。
いつもありがとう!

2017/03/17 (Fri) 01:25 | REPLY |   

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