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事例104 家族の想い出を「カゾクロ」に残そう



デイサービスに勤めていたときのこと。
奥様を介護するご主人に、意外な共通点がありました。


介護サービスを受ける為に契約を行なう場合、サービスについての重要事項説明書などの書類の他に、サービスを受ける本人を知る為の基本情報を記入する書類が有ります。

それは『フェイスシート』と呼ばれています。
氏名、生年月日から生活歴、趣味嗜好などの欄があり、書式は様々です。

ある日の契約の際の出来事です。
必要書類を持って、70代のご夫婦の自宅に伺いました。
ご夫婦は2人暮らし。
月に何度か近くに住んでいる息子たちが顔を出す程度で、奥様の介護はほとんどご主人がしていました。

最近、奥様の要介護申請が下りたばかりで、介護サービスのことはまだほとんど分からない、といった状態でした。
ケアマネージャーとの契約、訪問介護との契約、そしてデイサービスの契約…と立て続けに契約ばかりで、ご主人は「契約ごとに色んな担当者の人がいるし、契約する人と実際にケアしてくれる人も違ったりしてさ、もう誰が誰だか覚えられないよ!」と、困り顔で苦笑いされていました。

そんな中、早速、デイサービスの契約を行ないます。
施設のパンフレット、重要事項説明書、契約書を使って、サービスの内容を説明していきます。
ざっと読み合わせするだけでも30分以上はかかります。

その後、フェイスシートを使って、基本情報を聞いていきます。
なので、契約にかかる時間は1時間から、多くて2時間以上かかる場合もあります。

この日も、契約書類のみで1時間はかかっていました。
「長時間すみません、次は、ご本人様のことについて伺っていきます。」と私が話すと、ご主人は待ってました!とばかりに、そそくさとご自分の持っているファイルの中から、蛇腹折りにされた紙を私に渡してきました。

そこには、奥様の生まれた年から、何歳頃にどこに住んでいて、なんの仕事をしていて、いつ結婚して、いつ子供が生まれて、病気はいつ頃からで…などなど、ご本人の詳しい年表が書かれていました。
最後には、ご本人は何をしているときが好きで、食事の好き嫌いはこんなもので、デイサービスでこんな風に過ごさせてあげて欲しい、という希望も書かれていました。

ご主人曰く
「もうねー、疲れちゃうんですよ。契約の度に同じことばっかり聞かれて。だからね、これをコピーすれば妻や私たち家族のことが分かるというものを作ったんです。それ、コピーだから差し上げます。その他で分からないことがあればお答えしますよ。」

私たちにとっても、もの凄く助かりました。
契約時間が短縮されれば、その分、ご本人様と実際話をしたりして、コミュニケーションを取る時間を多くとることが出来ます。
さらには、契約時にいただいた情報を、今度は実際に介護を行なう現場のスタッフに伝える時に、その一枚があれば、生活歴が一目瞭然だからです。


それからしばらくして、また奥様を介護するご主人と契約を行なうことがありました。
そのご主人もまた、家族の生活歴を年表にしたものをコピーしてくれました。

その他にも、年表というほどしっかりとしたものではないけれど、ある程度の節目のことをノートに見やすいようにまとめて書いている旦那様が多かったのです。

意外な共通点でした。


介護デザインプロジェクトの中でも、『カゾクロ』の取り組みがあります。
『カゾクロ』=『家族』+『クロニクル(年代史)』

元気なうちに、家族と大切なことを話しておこう。そして、それを年表にして残しておこう。
という取り組みです。

介護の仕事をする中で、ご家族から頂く情報はとても重要なのですが、より良いケアの為に実際に必要な情報を知りたいと思っても、意外と家族からの情報が少ないときが多いのです。

『家族』だからこそ知らなくても済んでいたことや、一緒にいる時間が当たり前すぎてお互いのことを分かったつもりになっていることがあるかもしれません。

また、家族が病気になったり、突然最期を迎えることになった時、「もっとこうしておけば良かった」という後悔の中で一番多いのは、「元気なうちに旅行に連れて行けば良かった」とか、「一緒にゆっくり親父と酒でも飲んでみたかった」など、単純で簡単なことと思えるからこそ、後回しにしてしまうような何気ない日常の積み重ねなのかもしれません。

もし改めて、『家族』がお互いのことを知る機会があったとしたら、そしてそれを残しておく方法があったとしたら。家族の歴史を皆でたどる時間があってもいいのではないか、という想いで『カゾクロ』が出来ました。

『カゾクロ』の活動を始めて、そう言えばデイサービス時代に、独自に年表に残しておいてくれたご主人様方がいたなぁ…と思い出しました。

介護の準備の為にと思わずにやっていたことが、いつか、介護が必要になった時、『カゾクロ』を書いたことがあったな。そう思って頂けたら、煩わしい介護の契約にも役立ち、さらには介護士さん達にとっても重要なケアのヒントになれるかもしれません。

年末年始、実家に帰省する方も多いと思います。
賑やかに語らいながら『カゾクロ』を埋めていくその時間が、ご家族皆さんの共通の想い出として残れば幸せです。
是非、『カゾクロ』お役立て下さい!!








Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  22 2016 08:00
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