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事例101 施設の『家族会』ってどんなことをやるの?



介護施設では数ヶ月に一度、「家族会」を開催しているところがあります。

家族会とは、施設を利用している方の家族が、お互いに悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあおうという会です。

私がデイサービスに勤めていた時に開催していた「家族会」での出来事をお話しします。
家族会は2時間で、前半の1時間は介護関係の勉強会などを開催し、その後は集まった皆さんで介護の悩みを話し合ったり、情報共有を行なったり、個別相談に応じたりする会でした。


ある日の、家族会。
デイサービスを利用している80代の女性Aさんの、娘さんが来てくれました。

Aさんはもともと社交的ではなく、若い頃から自己中心的で、良く親戚や近所の方と他愛もない出来事でもめることもあり、さらに自宅でも、娘さんのご主人とは口を聞かないなど、少し難しいご性格だったそうです。

年齢を重ねて、家から出ることが少なくなってしまい、心配した娘さんがデイサービスを利用させ始めたのですが、その利用中にも、座る席やお風呂の入り方など、一緒に通う利用者ともめてしまうことが多く、事業所から利用を中止されたり、受け入れられないと言われたり、いくつかの施設をたらい回しにされたのち、私の勤めるデイサービスに来たのでした。


情報通り、Aさんは自分が座りたい席に座れないと「そこは私の席だ!」と怒り、歌のレクリエーションも自分の歌いたいペースで歌えないと「もう私は歌わない!」と怒り、何かにつけてプンプンと怒っているので、皆の輪の中に入ることも出来ませんでしたし、そのうち他の利用者から「あの人なんなの?」と苦情が出て来てしまうほどでした。

なんでうちの母親は上手く交流できないのか…と娘さんが悩んでいたらしいのですが、あまり私たちには相談してくれませんでした。
そんな中で参加してくれた家族会でした。


ある参加者の家族が、介護の辛い時期を乗り越えて、今は吹っ切れて楽しく介護が出来ています。という内容を話し始めました。聞いていたほとんどのご家族が、「凄いわね」「うちも頑張らなきゃ」と元気をもらったようでしたが、別のご家族が「凄いけど、楽しく介護なんてうちには出来ないわ。文句言われたら、言い返したくなるもんね」と素直な気持ちを話してくれ、場を和ませてくれました。

すると、Aさんの娘さんが涙ぐみながら私にそっと耳打ちをして来ました。
「ごめんなさい、もう帰ります。うちも、皆さんのような家庭ではないんです。とにかくうちは違うんです。」
そう言って、部屋から出て行ってしまいました。

娘さんを追いかけて廊下で話を聞くと、こんな本音を話してくれました。

「母がもともと、性格に難があるのは分かっています。若い頃からそのことで私も随分苦労してきましたし。母のことは誰にも理解されないと思います。そんな母の話を、恥ずかしくて話すことが出来ませんでした。だから、失礼ながら退席しました。
ただ、どなたかが、介護が楽しくできるなんて凄いけど、うちには出来ないっておっしゃいましたよね。私もゆくゆくは、母の状態を受け入れて、楽しく介護出来る日が来るのかもしれないけど、今、出来ないことは出来ないってハッキリ言っていいんだなって思いました。色んな意味でうちはうちなんだなって。
デイサービスの方にはご迷惑をかけるかもしれませんけど、これからも時々話を聞いてもらってもいいですか?」


それ以来、娘さんは家族会に参加することはありませんでしたが、私たちスタッフに気軽に今困っていることを相談してくれるようになりました。

家族会に参加したことで、今の自分自身は何を悩んでいて、今後どうしていきたいのか。誰に相談するべきで、それがいつなのか。娘さんは、気持ちの整理がついたようでした。
家族会という場は、悩みを分かちあい、共有し、連携することでお互いに支えあおうという主旨の会ですが、人の話や体験談を聞くだけでも、自分自身に置き換えて考えることが出来るいいきっかけだと思っています。

施設をご利用のご家族で、まだ家族会に参加したことがないという方もいると思います。
是非一度、参加してみても良いものだと思います。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  01 2016 08:00
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