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事例091 人生を輝かせるきっかけ〜はじまりはヒップホップ〜



先日、平均年齢83歳、世界最高齢ダンスグループのドキュメンタリー映画、『はじまりはヒップホップ』を鑑賞しました。

この映画は、田舎町のご老人達が集まる公民館の一つの提案から始まります。
「エンターテインメントの最高峰・ラスベガスで行われる 世界最大のヒップホップダンスの大会に出場しよう!!」


あらすじは以下のような感じ。

耳慣れないリズムに、昔のようには動かない体。持病もあるし、なにかあれば家族に迷惑もかかる。ラスベガスまでの旅費もないし、パスポートもない。 前途多難ではあるけれど、それでも彼らには“ 勇気”がある。
悪戦苦闘もジョークで笑い飛ばしながら、メンバーは一つ一つの問題を乗り越え、「ラスベガスに行く」 という夢のために一直線に進んでいく。
新しい世代や音楽との出会いを楽しみ、「今が一番楽しい!」と語る前向きでチャーミングな彼らの姿。

映画を見た感想として、
『新しいことへの挑戦は、人生をいくつになっても輝かせてくれる』
そんなメッセージをこの映画から受け取りました。

この映画を見ながら、デイサービスで働いていた時にやったことを思い出していました。

ある日デイサービスのスタッフがこんな提案をしました。
「毎年、市内のホテルでクリスマスリースの作品展が行なわれているんです。折り紙をやったり、小物作りをしたり、裁縫をしたり、普段のレクリエーションでやっている皆さんの特技を集めてリース展に出展してみませんか?」

手芸サークルの方々や市外からも応募のある作品展でレベルが高く、審査の通った作品は、ホテルのロビーの壁一面に展示され、見た方がどれが良かったかを投票し、優秀作品を決めるというものです。

今まで、デイサービスのレクリエーションで作ったものは、施設の中に飾るか、家に持ち帰ってもらうくらいしかしていなかったのですが、作品展に出す、と言うのは初めてでした。

利用者の皆さんに作品展のことを話してみると、「ダメもとでやってみたら良いわよ!」「そんな立派なものできるかしらね〜」と言いながら、前向きに考えてくれました。
初めての作品は、お裁縫が得意な方が多かったので、フェルト生地を葉っぱやハートの型に合わせて切り、綿を入れて縫い合わせたものを沢山作ってリースの木枠に貼付けていく作品。

クリスマスリースですから、応募が始まるのは秋ですが、利用者様のペースに合わせてゆっくり完成に向かっていけるように、夏から始めました。

一つの目標に向かって皆で作り上げていくことがとても楽しかったですし、それぞれがやった作業が一つの作品になっていく様が見えていくので、最初は出来上がるか不安だった利用者の皆さんも形が見えてくるに従って「ここにこの色を入れてみたら?」と、アドバイスを下さったり、裁縫の出来ない男性の利用者様は「フェルトを切るなら出来るよ!」と手伝ってくれるようになったり、リース作りをやりますと言わなくても、裁縫箱を開け、黙々とお裁縫に励んで下さる利用者も出てきました。


デイサービスでリースの作品展に出展するものを作っているらしい…と、隣のショートステイや事務所のスタッフも見に来てくれたり、利用者が家に帰って家族に報告してくれて、送迎で会う時に「ホテルに出す作品作ってるんですって?凄いですね!展示されたら家族で見に行きますからね!」と言ってくれるご家族も出てきました。

デイサービスのスタッフの一言が、利用者のやる気を引き出し、さらに周囲のスタッフや家族の楽しみにも繋がったのでした。

審査に間に合わせて出展。
ホテルにリースを運び込む際も、数名の利用者様に一緒について来てもらいました。
一人のおばあちゃんが、ホテルマンに向かって「一生懸命皆で作ったの、宜しくね!」と声をかけると、ホテルマンも穏やかに「大切に扱わせて頂きます」と笑顔で答えてくれました。

審査が通り、市内外から集まった100展以上の作品と共に、ホテルのロビーに掲示をされることになりました。とても嬉しかったです。

デイサービスの皆でホテルまで見に行きました。
長期間をかけて、みんなの力を合わせて作った作品が、施設の枠を超えて一般の作品と変わらない土俵で評価の場に出ていることがとても嬉しかったです。

さらに、作品展を見に来ている他のお客さん達が私たちの作品についている団体名を見て、「デイサービスですって!施設でもこういうところにも出す作品とか作るのね!」と驚いている声をちらほら聞くと、『高齢者や施設』のイメージを変えるきっかけにもなれるような気がしました。

残念ながら、賞をもらうことは出来ませんでしたが、その後は毎年リースを出展することが目標となりました。
さらに、このことがきっかけで、施設の中で作った他の作品も、市民手工芸作品展に出展しよう!という発案が出たり、書道は競書雑誌に投稿し「級」や「段」を認定してもらい昇格を目指して練習出来るようにしよう!など様々な取り組みが施設の外へ向けて発信出来るような思考に変わっていきました。

年をとっても、施設や介護サービスを受けていても、チャレンジすることはやる気や生きる力を引き出します。一人じゃ出来ないことも皆で力を合わせたり、誰かの助けがあれば叶えられます。

私たちスタッフや家族にとっても、出来ないことを手助けするだけではなく、一緒に作り上げていく楽しみや、それによって輝いている本人をみることが出来るのはとても嬉しいものです。施設の中だけではなく、地域や社会という広い範囲の中で生きているということを実感出来ると、何かを考える時に思考まで広がるのだと言うことが実感出来ました。

『はじまりはヒップホップ』
この映画を見ると、日常の見え方、考え方が変わるかもしれませんよ。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  22 2016 08:00
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