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事例088 問題解決に向き合う姿勢


ある真夏日の出来事です。
気温が35度を超えたその日、グループホームにて、女性Aさんが私にこう言いました。

Aさん 「部屋が寒くてたまらないの。エアコンつけてくれる?」
私 「え?ついてますよ。消すんじゃなくて?」

Aさん 「そう。つけたいの。」
私 「多分エアコンが効きすぎてるんですよ。一旦、切りましょう。」

Aさん 「なんで?寒いのよ。つけたいの。」
私 「ん?つける?じゃぁ、設定温度を上げますね。」

Aさん 「しょうがないわね、まったく。暖房つけたいのに、他の職員さんがリモコン持っていっちゃったのよ。返してくれる?」


「つけたい」とは暖房のことだったんですね。
こんな真夏日に部屋に暖房をつけるなんて、考えただけでも恐ろしくなりました。


今までご自分で、室温調節ができていたAさん。しかし、最近は少し難しくなって来たようです。

実は前の日にも、職員が訪室した際に部屋が異様に熱くなっていて、「寒いから」という理由で、暖房をつけていたことが分かったそうです。
これはいけないと思った職員が「リモコンが壊れた」という適当な理由をつけて、Aさんが操作できないように事務所保管にしたのでした。職員にとっては暖房をつけさせない為の必要な嘘だったのかもしれません。

しかし、「部屋も体も寒い」「リモコン返して」としばらく訴えるAさん。

それに対して、「リモコンは壊れています」で乗り切ろうとする職員。堂々巡りなのと、Aさんの職員に対する不満は募るばかりです。


室温調整に関しては、施設だけでなく自宅で介護されている方にもあり得るこの出来事。
皆さんならこの状況にどのように対処するでしょうか。

まず、暖房をつける為のリモコンを職員に「取られた」ことが気に入らないことが一番気になっているようなので、その部分を丁寧に説明しました。

私 「今、リモコンは事務所で保管してあります。昨日、別の職員がリモコンの動作がおかしいことに気がついて、これから修理に出す予定なのだそうです。今日は、共有のリモコンを使って室温調整をしますが、外の気温が30度を超えていますので、暖房を付けるのは難しいです。一旦、今ついている冷房を切ることから始めてみましょう。」

Aさん 「修理に出すって、誰かも言ってたけど…寒いのよ。」


そしてすぐに、体温調節機能の低下について考えました。
代謝機能が低下していて、運動量も少なく、もともとの体温がそう高くない高齢者にとって、私たちが適温と思う温度でも、「寒い」と感じる場合があります。

そこで、運動を勧めました。
幸いAさんは、毎日の散歩を日課にしていました。しかし、外が暑いからという理由で私たちから声をかけることを控えていました。

私  「身体に冷えを感じるのは、運動不足の場合もあります。Aさんは少し前まで毎日散歩に行っていましたよね。最近はどうですか、汗をかくことはありますか?」
Aさん 「そう言えばないわね。最近は外が暑いみたいだから、散歩も控えていたし。」

その日は気温こそ暑い日でしたが、ちょうど空が曇って来て、日差しが遮られていたので、帽子をかぶり、水分補給をし、Aさんと外に出てみることにしました。

Aさん 「今日はこんなに暑かったの?部屋にいるとわからないものね。汗かいてきたわ。」

と、あまりの暑さにほんの少しのお散歩で終了。
汗をかいた服を着替え、水分補給をしていただきました。

この時点で、暖房をつけたいほど寒かったことはもう忘れてしまっていました。


出来ないことが増えてくる認知症ですが、目先の問題解決だけにとらわれてしまうと、信頼関係を損なったり、新たな問題の火種になってしまう場合があります。間違ったことをしていたとしても、本人にはそれをする為の理由があるのです。
そこを理解出来なければ、なんの問題解決にもなりません。


まずは、本人がどうしてそのような言動をしているのかに立ち返り、その方にあった解決方法を探していくことが必要だと思った事例でした。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  01 2016 08:00
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