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事例集008 百歳のお祝いにて

認知症の80代の女性Mさんは、グループホームに入居しています。

車いすに座り、机に伏せ、何かを探すようにテーブルの前に手を延ばしてみたり、
他者の話す言葉に反応して「そうそうそうそうそう…」と声を上げてみたりしますが、
終始眠そうに目をつぶっています。

スタッフや他者の声掛けには、「そう」「だめ」などの単語で返して下さいますが、
なにか意思表示をする際には「だだだだだ…」「ままままま…」吃音言葉になってしまいますし、
会話として言葉が連続してつながることはほとんどありません。

でも、言葉は少ないですが、Mさんはとっても素敵な笑顔で話して下さいます。

昨年、この施設で100歳の方のお祝いがあり、
そのイベントとして懐かしの歌を歌ったことがありました。

会場では、Mさんはスタッフが付き添って端の方にいらっしゃいました。
いつものように下を向いて目をつむっていらっしゃいます。
イベントが始まり、ご入居の皆様と懐かしの昭和歌謡を歌っていきます。
  
東京ラプソディ、東京キッド、見上げてごらん夜の星を…

一緒に歌ってくださる方や、ブラボー!と合いの手を入れてくださる方。
様々に楽しんでくださっていますが、Mさんは何時ものように下を向き、
時より「みあげてぇぇぇ…」等と歌詞の断片をひろって下さっていました。

さて、イベントも後半。

100歳の記念に100年前に歌われていた歌をとの思いで、“カチューシャの唄”を歌いました。
歌い始めたとたん、私の歌に並行して、しっかりとした大きな歌声が聞こえてきました。

♪カチューシャ可愛いや 別れのつらさ せめて淡雪 解けぬ間と…

あまりに突然のことにみんなが驚きました。
Mさんが、歌詞をしっかりと歌っています。
メロディーも音程も、私の声とギターの音色に合わせて。
そして、いつもの素敵な笑顔で。

思わずスタッフが、カメラのシャッターを切ります。

そんな驚きとともに、イベントの最後は、これも100年前から歌われている“ふるさと”。

♪うさぎ追いしかの山~ こぶな釣りしかのかわ~
  
全員が合唱となる中、Mさんもいっしょに歌詞をしっかり歌って下さっています。
日頃は、単語しか発することの出来ないMさんが、流れるように歌う姿は、みんなの胸を打ちました。

あとでスタッフに聞いた話では、“カチューシャの唄”は日頃のレクリエーションでも滅多に歌うことのない唄で、まさかこんなにはっきりと歌詞を歌って下さるとは思わなかった、とのこと。

まさに“歌”が引き出した言葉は、Mさんの意思を、想いを、私たちに教えてくれたようでした。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  19 2015 08:00
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