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事例087 らしい写真を使いたい


遺影について、デイサービスに勤めていた頃こんなことが多くありました。

デイサービスに通って元気に過ごしていた方でも、病気になったり、突然お亡くなりになることもあります。
その後、葬儀などでご自宅に伺った際に、飾ってある遺影を拝見するとよく見覚えのある写真が使われている、ということです。

ご家族から話を聞くと、「突然のことで、葬儀に使える写真がなくて困ったんです。そう言えば、デイサービスで撮ってもらった、レクリエーションを楽しんでいるときのいい写真があると思い出して、その写真を使いました。それがなかったら、昔の写真を使わなくてはいけないところでした。やっぱり、今の父母の顔に近いもので本人達らしい顔の写真を使いたいですからね…」という声を沢山聞きました。

デイサービスを楽しんでいる笑顔や思いがけないシーンをご家族にもみて欲しいし、私たちの思い出にも残したい。そんな気持ちで、何気なくお渡ししていた写真が、意外なことに遺影に使われることが多かったのです。


「らしい顔の写真を…」という言葉を考えたとき、自分の祖父母の時の葬儀を思い出しました。

祖父は、直前まで元気だったのに、散髪に言ってくると家をでたまま、途中で脳出血で倒れて亡くなりました。70代でした。

遠洋の漁師で、何ヶ月も家を空けることが多く、家族との時間は本当に少なかったようです。
寡黙で内向的な性格で、歳をとって船から降りても、どこかへ一緒に出かけた記憶もあまりありません。
ですから、祖父の普段の写真はほとんどありません。
そんな祖父の葬儀の準備で家族が一番困ったのは、やはり遺影でした。

祖父の写真は、誰かの結婚式で写っているぼやけた写真くらい。
やっと見つけたきちんと写っているものは、祖父の船舶免許に写っている写真。
しかも30年くらい前の若い頃の写真です。

仕方なくその写真を使いましたが、訪れた親戚やご近所の方々に「じいさん随分若返ったね。」「写真なかったのかい?」といろいろ言われました。
頭の中にある祖父のイメージと写真が違いすぎて、ピンと来ないという感じでした。


祖母は、祖父とは反対で、活発な性格で出かけたり人に会うのが大好きでした。
旅行に言った時の写真や、色んな写真がありました。
病気のため、何ヶ月も入退院を繰り返していて、亡くなる際は家族も覚悟が出来ていました。

遺影に使う写真を選ぶ時もスムーズで、母が選んだ数枚の写真から、家族みんなで1枚を選びました。
その写真は、私にとって想い出の写真でした。


私が成人式の前撮りで写真館に行った時、母と祖母がついてきました。
写真館の方が、「せっかくだからおばあちゃんとお孫さんで一枚撮りませんか?」と言ってくれて、祖母は嫌がりましたが、私がどうしても、と頼んで撮った写真です。

祖母が椅子に座り、私が後ろから祖母の肩に手を置き微笑んでいる写真です。
今でも、遺影をみるとその時の想い出が浮かんできます。


今は『終活』という言葉が流行っていて、生前に遺影をとって準備をしておくことが多くなっているようです。
中には、いつでも今の自分が選んだ最高の写真を使いたいからと、毎年撮り直している、という方もいるようですね。


自分で選ぶにせよ、家族が選ぶにせよ、その人らしい写真が一番なのではないかと思っています。
大切にしている人や物と写っている写真、大好きな場所で撮った写真、お気に入りの服を着ている写真…などなど、きっと写真の中の顔は良い顔をしているはずです。

突然の葬儀でしょうがなく選んだ写真ではなく、その人らしい写真を選ぶことが出来たら良いですね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  25 2016 08:00
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