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事例079 家族との距離

先日、グループホームで私の姉の話をしていた時のこと、あるおばあちゃんがご自身の兄妹のことも教えてくれました。

おばあちゃんAさんは地方の生まれで、数年前にご主人が亡くなり、ひとり暮らしをしていました。
Aさんを心配した息子さんが、東京へ呼び寄せたそうです。
Aさんの兄妹はなんと13人。そのほとんどが生まれた土地で暮らしています。
たまに電話でそれぞれと話をしているそうですが、「兄妹の中でひとり、寝たきりになってしまった妹がいる」という話をしてくれました。

かつては兄妹の中で、一番おしゃべりで明るい性格だった妹、Bさん。
盆や正月に集まる時は、率先して冗談を言って皆を楽しませてくれる、家族のムードメーカーだったのだそうです。

Bさんは、漁師だったご主人を早くに亡くしました。
漁師を継いだ息子は、結婚して数キロ離れたところに暮らしていたそうです。
それでも漁に出る際は、母であるBさんの家に寄るのが日課だったそうです。

ある日、海が時化ていて漁が無いので、息子さんが家に寄らなかった日に。
Bさんは、寝室の2階からトイレに降りたところで、脳梗塞で倒れました。
パジャマ姿だったので、おそらく夜中か朝方だったのだろうと思われたそうです。

“なんだかおかしい”、そう思ったのは隣の家に住む親戚でした。
午後になってもカーテンは開かないし、毎日顔をあわせない日は無いほどの付き合いだったからです。

インターホンを押しても音沙汰無し。
カーテンの隙間をのぞいてもよく見えない。
電話をかけても繋がらない。

親戚の方は、息子さんに連絡をとり、駆けつけた息子さんが倒れているBさんを発見しました。

命こそ助かったものの、Bさんは寝たきりになり、自分で身の回りのことをすることも、話すことも出来なくなってしまったそうです。それでも言葉を聞いて理解することは出来て、姉であるAさんがお見舞いにいくと、おいおいと泣くのだそうです。

「人一倍おしゃべりで明るい性格だった妹のことを思うと、私まで涙が出て来てね…」
そう言って、Aさんはティッシュで涙を拭いながら、
「誰かが一緒に住んでいればな…とか、思うこともあったけど、でも、このご時世だもの誰も責められないわね。」
そう話してくれました。

Aさんの田舎のように、地方ではまだまだ親戚関係や近所付き合いが深く、若い世代には少し面倒だな…と感じてしまう暮らしがあるような気がしますが、Aさんの妹Bさんのような出来事を考えると、適度な距離感を保てていれば、いざという時に普段とは違う雰囲気を感じたり、最悪の事態を回避出来たりすることがあるんですね。

最近では地震や災害時に、地域の密な情報によって、行方不明者が早期発見されたり、避難の協力体制が出来たりしている話をテレビなどで見聞きました。

家族構成や住む環境が変化しているため、“昔のように”とはいきません。
しかし、昨今は町内会や自治会などの小さなコミュニティーの再建が地域包括ケアシステムの一つとして見守り力の増強に力を発揮しています。

さらに、家族は近くに住んでいるけれど一緒には住んでいない、という関係の家族も増えていますね。
定期的に訪問したり、電話をかけたり、家族の中での“適度な距離”を保つことや、ご近所さんにも協力してもらい、何かあったら連絡をもらえるような体制をとるなど、大切な家族を見守る具体策が増えるといいですね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  30 2016 08:00
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