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事例076 頼りたい人


グループホームに入居している70代の女性Aさんの話です。
Aさんには子供がいません。

そのため、何かあった場合の緊急連絡先になっているのは、弟さんです。
弟さんは、隣の県に住んでいて車だと往復2時間かかりますが、とてもまめにAさんの面会に来ます。
Aさんが以前住んでいたマンションはそのままになっているので、弟さんは面会に来る前に、必ず寄り、窓を開けて風を通し、郵便物を整理してくるのだと言います。

「大変じゃありませんか?」と、声を掛けると
「家内とケンカした時の家出用に使いますから」と、冗談で返してくれる明るい弟さんです。

姉想いの素敵な弟さんだな、さぞかし昔から兄弟仲良くされていたんだろう…そう思っていたら、思いがけないエピソードを聞きました。
弟さんの話。
「実はね、姉がこのホームにお世話になるまで何十年と私たちは音信不通だったんです。お互いどこに住んでいるのかも分からない状態。
それがある時、突然救急隊だという人から電話がかかって来たんです。
姉が自宅で具合が悪くなり、救急隊を呼んだらしいのです。救急隊が中に入ると、リビングの柱に“自分に何かあったらここへ”と私の携帯の番号が書いた紙が貼ってあり、それを見て電話をかけてきたんです。

しばらく会っていないものだから、初めは戸惑いましたよ。でも、とにかく病院へ駆けつけました。
その後、入院することになったので、手続きに必要なものを揃えるため、初めて姉の住んでいたマンションを訪れました。そこで、本当に驚いたんです。

リビング、キッチン、寝室、玄関、いたるところに“何かあったらここへ”と私の携帯の番号が貼り付けてあったんです。それを見て、初めて一人暮らしの姉の寂しさや不安を感じました。姉の頼りは自分だったんだ。そう思いましたね。

姉と私が音信不通になったのも、別にケンカしてそうなったわけではありません。
姉は結婚していないけれど、若い頃から仕事はバリバリしてるし、性格も気丈な人でしたから、一人で暮らしていることに何の不安も感じませんでした。まぁ、一人でのんびり上手く暮らしているんだろう、くらいにしか思っていませんでしたからね。でも、違ったんですね。

携帯番号は親戚にでも聞いたのかな。自宅のいたる所に貼付けてあったということは、倒れる前から体調や精神面での不安があったんだと思います。でも直接は言えなかったんでしょうね。」


最近、独身生活を送る人の老後についての問題点が良くニュースになっています。

先日もテレビ番組で特集をやっていました。
配偶者が突然亡くなった、子供はいない、親族は疎遠、そのような方が家を借りたり、介護施設に入居する際に、身元保証人になる人がいない、という内容です。
核家族化、少子化が進む昨今の解決すべき課題の一つような気がします。

解決策の一つとしては、身元保証人代行サービスを行なっている会社や法人もあるようですが、会社が倒産してしまうと登録料も返ってこなかったり、サービス会社を偽った詐欺にあってしまったりと、とても残念な被害にあわれている方も少なくないようです。

それを考えると、家族や親戚などとの関係作りをしていること、信頼出来る誰かが側にいること、もしくは、信頼出来るサービスをきちんと選ぶことは、人生を最期まで安心して過ごす為の自分の責任としてやっておかなくてはいけないことなのかもしれない。そう思ってしまいました。

Aさんは、その気丈な性格から、迷惑をかけたくないとか、気安く誰かに頼りたくないという気持ちがあったのかもしれません。しかも、姉の立場なら尚更だったのかな、とも思います。
でも、しっかり弟さんの連絡先を分かるようにしておいたおかげで、突然の入院や施設への入所も出来ました。弟さんは驚いたようですが、お姉さんの気持ちを理解し、今では熱心にAさんの自宅管理や面会にも来ています。

将来に不安を感じたとき誰に頼ることが出来るのかや、それに変わるどんなサービスを受けることができるのかは、情報やサービスがあふれているこの時代だからこそ、どうにかなりそうだけど、実際はどうにもならない事態に陥りやすい重要な問題です。そうなる前に、まずは一番身近な家族の繋がりを見直してみるといいかもしれませんね。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  09 2016 08:00
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