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事例069 介護っておもしろいのよ


都内の健康ランドに行ったときのことです。

その日は土曜日なのにとても空いていました。
脱衣所には数人しかいなく、お風呂から上がったご婦人のお友達同士であろう3人組が、賑やかに話をしているのが良く聞こえました。歳は50代くらいでしょうか。

私が入浴を終え脱衣所に戻っても、その3人組がまだ話していました。

(随分長話してるな…)と思いながら、聞こえてくる話を何となく耳にしながら着替えていると、
3人のうちの1人が話した言葉がとっても気になってしまいました。


「でね、そのお花、おばあちゃんが食べちゃったのよ!もぅ、唖然よ、唖然。」

(ん?おばあちゃんが花を食べた!?)
一体なんの話だろうか…
よく聞いていると、その人は自宅で義理の母親を介護しており、最近認知症の症状が出てきて、目の前にある物を口に入れてしまうようになってきたという話でした。

話は続きます。
「この前は、なんだか口が動いてるなと思ったら、ティッシュペーパーを口に入れていて、口の中で丸まった紙をむしゃむしゃ噛んでたのよ。あんなの飲み込んだら詰まって死んじゃうじゃない!ヒヤヒヤものよ!」

聞いている他の2人は殆ど絶句状態で、「そうなんだ…そんなになっちゃうんだー」と、言葉を返せない様子でした。

(やっぱり、介護の話ってこんな風に暗くなっちゃうよね…)と思っていたら、次に話した言葉に驚きました。

「ね!面白いでしょう!ボケるって面白いのよ。」

介護って大変なのよ…。という話になるのかと思いきや、意外な言葉。
聞いていた2人は、不思議そうに「え?面白くないでしょう!大変じゃない!」と返します。
それに対して、介護をしているご婦人はこんな風に話しました。


「食べ物を口に入れちゃうのはさ、ものを片付けておけばいいの。テーブルにはいつも、おにぎりとかちょっとしたお菓子だけを置いておくの。それで解決!
一つ解決するとまた面白いことしてくれるのよ。次の手にはどうやって工夫したら、うまく行くかを考えるのがだんだん楽しくなって来たのよ!
だってさ、認知症は治らないっていうじゃない!いちいち腹立ててたら、こっちが参っちゃうって思ったのよ。どうせ治らないならと思ったら、すっと楽になって、今度は何をしでかしてくれる?って思うようになったのよ。」

聞いていた2人は、「なるほどね、私達だってさ、これから親を介護するかもしれないじゃない。でも、そう思えるかしら。ちょっと難しいかもね。
あ、でも、あなたがいるから安心だわね!相談に乗ってよね。ここで息抜きしながらさ。」と冗談混じりに笑いながら、脱衣所を出て行ったのでした。


「介護って大変らしい」という噂や話をしているのは見かけたことがありますが、「介護は意外と楽しい」「相談出来る人がいるから安心」という話になっているのはとても珍しいなと感じました。

このご婦人方の話は、最後は冗談混じりのように終わっていましたが、聞いていた2人の人がいつか自分が介護をしなくてはならなくなった時、今日の話をきっと思い出すだろうなと思います。
助け合える人がそばにいること、それが、いかに心強いことかと感じるはずです。


介護の話は何となく敬遠されがちで、考えることも後回しになりがちですが、このように経験した人が身近なお友達や家族などに伝えることが、いつか聞いた人の力になるということが多くあります。

日常的に介護の話がしあえる様になったら、もっと多くの人が前向きに介護と向き合える気がしています。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  21 2016 08:00
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