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事例067 認知症の症状(暴言・暴力)にどう向き合うか

たびたび介護施設にて、入居者に対するスタッフの虐待事件がニュースになることがあります。
加害スタッフの精神状態が問われたり、施設としての運営方法はどうだったのか?など、スタッフや施設側の対応が非難される中、その度に介護現場からささやかれるのが、“利用者からスタッフに対する暴言・暴力もある”という声です。

確かに私も、認知症対応型のデイサービスに勤めていたときは、そのような方の介護をしたことがあります。

入浴介助やトイレ介助で、腕をつねられたことや、かじられたこと、引っかかれたこともありますし、髪の毛をわしづかみにされ、毟られたこともあります。
かけていたメガネを何度も払いとばされして壊されてしまったことも。
「馬鹿やろう」「殺してやる」「目玉くりぬいてやる」、そんな非情な言葉も投げられます。


入浴介助やトイレ介助は、清潔の保持や褥瘡(じょくそう)予防などの観点から、本人の意思に反して介助をしなければならないことがあります。
その場合も、しっかり説明はしますが、理解して頂けないこともあります。
意志に反して衣類を着脱させなければいけないので、抵抗があることは当たり前のことだと思います。
私たちも心を鬼にして行なっています。

しかしながら、まさかの場合の暴力もあります。


徘徊行動のある方の隣を付き添って歩いていて、外に出ようとしたので、靴を出そうと手をのばした瞬間になぜか逆鱗に触れて、立ったまま、壁ドン状態で首を絞められたり。

一緒に食事をとっているとき、近くを通りがかったスタッフと話し始めた瞬間に、顔を横からグーパンチで殴られたり。
車に乗る際に、自分の力では足を上げられない方に手を貸したら、顔面につばを吐きかけられたり。


痛みや驚きや困惑で、落ち込むときや苛立つこともありました。
いくら病気の方の行動といえども、そのような場合に感情をコントロールすることは難しいのです。
首を絞められ、つばを吐きかけられても、「病気だから仕方ない」、と平然としていられる神のような人は多分いません。


しかしながら、私たちは介護のプロです。
暴力・暴言があることを嘆いているだけではいけないと思います。

私たちに出来ることは、まずは真摯に認知症の症状に向き合い、暴言暴力の裏にある理由を理解しようとすること。
認知症の症状を“問題行動”というくくりにしてしまって、いかにその行動に対処するかだけにとらわれてしまっているスタッフも少なく有りません。
なぜそのような行動をしてしまうのか?からきっちり考えることが出来れば、対処の仕方も変わってくるはずです。

さらに、環境やチームワークで改善する努力をすること。
女性のスタッフでダメなら男性のスタッフが試してみる。
若いスタッフがダメなら年配のスタッフが試してみる。
大勢集まっているフロアで過ごすのはやめて、静かな個室にしてみる。
など、あらゆる方法を試して見ること、そしてそれをチームで共有し、次のケアに活かすことが大切です。

最後に、その努力を家族にきちんと伝えられていること。
利用者・入居者だからと言って、お客様は神様ではありません。
施設として何が出来て、最大限どこまで努力したのかをしっかり家族に伝えることが出来るかが大切なのです。
出来ないことは出来ない、出来ることはここまで出来ると、しっかりと明確にして置くことが必要です。

たまに、ご家族に話をしても「うちの母がそんなことをするはずがない」「施設の対応方法が悪いのでは?」と理解して頂けないご家族もいます。
「どうぞ、一度見学にいらして、状況をご覧下さい。」といえるような介護が出来ているか?
そう自分に問いながら向き合ってみるのもいいかもしれません。


施設においては、このように対処出来ますが、在宅で介護をされている方にとっては、認知症の家族から受ける暴言・暴力は本当に辛いものと思います。
今までの家族関係や環境もあり、複雑な思いが巡ることもあると思います。
暴力の痛みよりも、精神的な痛みの方が強く感じてしまうかもしれません。
そんな時は、絶対に我慢をしないで、誰かに助けを求めてほしいと思います。

介護のプロのように、環境を変化させたりチームワークでケアをすることは、在宅介護では非常に難しいことと思います。
“家族にしか出来ないこと”もありますが、“家族だから上手くいかないこと”もあります。
困った時には、地域包括支援センターや近くの施設でもいいです、すぐに相談してほしいと思います。
Category: 介護の現場から(事例集)
Published on: Thu,  07 2016 08:00
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