介護デザインプロジェクト

このブログでは、
介護の現場エピソードや、現在の社会問題について情報を発信していきます。

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事例集022 お泊まりデイサービス

介護保険で宿泊が出来る施設が慢性的に足りないなどの理由から、お泊まりデイサービスが話題になっていますね。

今まで、お泊まりデイは介護保険外で提供されるサービスなので、法的基準がなく、施設任せの状態でした。そのサービス内容や環境が劣悪な事業所がある、とのことで、厚生労働省は運営に関する指針をだしました。

詳しい文書資料はこちら

さて、お泊まりデイサービスの利点を話す際に必ず言われるのは、“利用者家族の介護の負担軽減のため”、という内容。在宅介護を行っている家族のためのもの。という意識の方が多いと思います。

実は、デイサービスで働いている時に、こんな声を聞きました。
それは、あるご利用者様同士の会話です。

Aさん「私たち、こうやってデイサービスに通って、楽しみがあって幸せよね。ここに来ている間は、娘にも迷惑かけないし。娘も、今頃楽してるんじゃないかしら。」

Bさん「そうよね。うちも息子が仕事に行ってしまったら、犬と二人きりだし、話し相手もいないしさ。」

Aさん「このデイサービスは職員さんの顔も覚えたし、私は家にいて気を使っているよりここの方が気楽よ!」

Bさん「私も!たまにはさ、夕飯でも食べて、夜までみんなで気の置けない話でもしてさ、眠くなったら寝てさ、ちょっと旅行に行ったような感じで過ごしてみたいものだわ。」

Aさん「それいいわね!毎日じゃ、嫌になっちゃうけどさ、たまにそう言う日があっても楽しいわね!家族だって、たまにはゆっくりしたいと思うし。」

デイサービスに慣れてきた利用者様から、たびたびこのような話が出ていました。
“家族のために”ではなく、“まず自分のために”。

家族が自分のために世話をしてくれて、毎日ありがたい。
だけど、自分のために何時も悪いな…と、気を遣っている生活からたまに抜け出したい。息抜きしたい。そうしたら、自分のためにも、家族のためにもなる。そのような意味も込められているんですね。

お泊まりデイサービスは、家族の負担軽減のため、と世間では認識されています。もちろん、それも間違いではありませんが、デイサービスの現場から、利用者様の視点に立って見ると、お泊まりデイサービスの使い方が、少し違って見えてきました。

Posted by おこないちかこ on  | 0 comments 

事例集021 おばあちゃんと孫

デイサービスの夕方。
高層マンションに家族と住むおばあちゃん、Aさんの送迎から見えて来た、家族の風景です。

Aさんは、背が140センチ台と小さく、言葉少なで、非常に穏やかな性格です。いつもシルバーカーを押していて、ちいちゃくて可愛いおばあちゃん、といった印象です。

最近は、自宅でトイレの場所が分からなかったり、ご飯を食べたことを忘れたりします。何度も同じ質問をするようになり、認知症の症状が進んでいて、普段自宅で介護して来たお嫁さんは、「おばぁちゃんを見るだけで、ストレスなんです」と話し、家族の負担軽減のために、デイサービスを利用していました。

Aさんのマンションは高層マンションなので、エレベーターは、タイミングわるく乗り逃すとなかなか来ず、しばらく待たなくてはなりません。


ある日の送迎で、いつものようにマンションのエントランスの前に送迎車をとめ、シルバーカーを押しながらゆっくり進むAさんに、私が付き添ってエレベーターホールまで歩いていました。

突然、後ろから男の子数人の声が聞こえます。遊びから帰って来た様子でした。

「やべー!来てる!さっさと行っちまおーぜ!」

誰かがそういいながら、私たちが、なんとかエレベーターホールまでたどり着くか付かないかの間に、男の子らは私たちの脇をスーッと走り抜け、さっさとエレベーターに乗って行ってしまいました。

エレベーターが、降りてくるのをしばらく待つことになってしまった私たち。

あまりに心ない男の子たちの行動に、心の中で苛立ちながら、やっと降りてきたエレベーターに乗り、Aさんの自宅前へ。

インターホンを鳴らすと、「○○くん、おばぁちゃん帰って来たから鍵開けてあげて」、とお嫁さんの声。

無言でガチャ、と鍵が空き、「デイサービスです、ただいま戻りました!」と、私が扉を開けると、目の前にいたのは、なんと、さっきのエレベーターの少年。

Aさんの孫だったのです。
驚いたのと、なんで!?という気持ちと、とてもモヤモヤした気持ちになってしまいました。

Aさんに対し、「お帰りなさい」でもなく、シルバーカーを入れるのを手伝うでもなく、さっさとリビングの方へ行ってしまいます。


しばらくして、お嫁さんがエプロン姿で出て来て、「おばぁちゃんはお部屋にいって!」と話し、Aさんが部屋に入るのを確認すると、私がデイサービスでの様子を報告する暇もなく、話し始めます。

「最近は、なんにも分からなくなって、夜中もご飯がない、と言って起きて来て。自分の部屋も分からなくて、孫の部屋を開けるもんだから孫も怒って。旦那は仕事で遅いし、私ばっかり。もう限界なんです。ストレスなんです。」

仕事の忙しい息子、専業主婦の嫁、小学生の孫。そして認知症のおばぁちゃん。
デイサービスを利用する前から、Aさんの認知症の進行とともに家族の気持ちが変化していったのではないかと思います。


お嫁さんが、限界を感じる前に、差し伸べる手はなかっただろうか。
話を聞いてくれる場所はなかっただろうか。

子供というのは、そのような変化に敏感に気がつきます。
自分の母親が、誰かのせいで苦しんだりしていたら、その誰かを恨んでしまうのは当然かもしれません。

そうなる前に、出来ることはなかっただろうか。

老いや介護は、日常生活の延長線上にあって、誰しもが関わること。今、お隣さんかもしれない。レストランで隣のテーブルに座った家族かもしれない。明日、自分の両親かもしれない。

今の世の中は、働ける人、元気な人がリードをとってその人たちが暮らしやすい社会を築いているけれど、さて、その人たちが20年30年経ってそのリードを次の世代に受け渡した時、どんな世の中に生きていきたいか。

世の中は、欲しいものが手に入るように、すぐには変わりません。だから今から、老いや介護を身近に感じるシステム作りをしていかなくては行けない気がしています。

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事例集020 理解あって

先日電車に乗っていたときに、隣に座っていた50代くらいの奥様方2人のお話。

アンチエイジングの話をしていた2人。お化粧品や健康食品の話で盛り上がっています。
話は徐々に老後の話になり…

Aさん
「やっぱり趣味は続けないとダメよね、この間、TVで認知症の話してたの見たのよ。人と関わらないとダメって。」

Bさん
「でもさぁ、私の通ってるパッチワークの教室にね、認知症の人が通ってるのよ。通ってるっていうか、娘が送り迎えまでしてるのよ。教室でもなかなか作業が進まなくて、先生に何回も同じこと教えてもらってさ。先生は”いいんですよ”って、受け入れてるけど、やっぱり周りで一緒にやってる人はいい顔しないわよね。あんなになっても通わせるって、評判なのよ。」

Aさん
「そうよね。その娘さんも考えないのかしらね。迷惑はかけたくないものね。私は、娘に言ってあるの。家族や他人に迷惑がかかるようになる前に、施設に入るから大丈夫って。」

Bさん
「迷惑をかけないように、いつまでも元気でいなくちゃと思うわ。」


この話を耳にしたら皆さんはどう感じますか?

どんな病気もなりたくてなる人はいません。
叶うならば、出来るだけいままで通りの生活を保ちたいと思うはずです。

きっとそのパッチワーク教室でも、先生と認知症の方のご家族との間で、利用についての話し合いがされているはずです。

推測ではありますが、認知症を発症する前からパッチワークをやっていて、病気になっても出来ることは続けたいというご本人の意思や、続けさせたいという家族の意志があって、それを教室の先生が理解して続けることが出来ているのだと思います。

しかし、通っている仲間から理解がされていないのは悲しいことです。

Aさんは認知症のことをテレビで見たと言っていました。Bさんは実際に一緒の教室に通っています。
2人とも、病気の症状などは理解して、そうならない為の予防の意識は持っているようですが、病気になったら迷惑をかける、周りから敬遠される、という認識がされているような気がしました。

パッチワークを続けていることが、認知症のご本人にとって外出の機会となり、楽しみや自信や、手作業による脳の活性など様々なすばらしい効果をもたらしていること。そして、周囲の理解さえあれば少しでも長く趣味を続けていけることを、説明することが出来たら。と、2人の奥様方の隣に座っていた私は、ウズウズしてしまいました。

話題にあがっていた認知症の方が、周囲に理解されて、パッチワーク教室を続けられると良いなと願っています。

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事例集019 新しいレクリエーション

高齢者施設でのレクリエーションには音楽を使ったものがあります。
それは音楽療法だったり、カラオケだったり。
多くが懐かしの曲を選び、知っている曲を楽しむスタンスです。
歌を歌うことは心肺機能を高めたり出来ますし、懐かしい歌は過去を回想できる効果があります。

そんな音楽レクリエーションの、私の中の常識を覆すレクを教えてくれた先輩女性スタッフを紹介します。

先輩は60代でしたがとてもアクティブで、休みの日にはジムに通ったり、展示会や博物館に行ったり、とにかく外出しています。さらに新聞や雑誌、ニュースを良く調べており、常に施設で使えるレクリエーションや話題を見つけながら過ごしている方でした。

ある日、体操の時間に施設では聞き慣れない音楽が聞こえてきました。
ジャンルで言うとヒップホップです。

(え?ヒップホップ?)と思いながら聞いていると。

「皆さん、今日は少し若者の世界を感じながら体操をしましょう!皆さんの若い頃にはなかった音楽のジャンルに、ヒップホップというジャンルがあります。若者に人気のジャンル、とてもテンポが良いので、リズミカルに身体を動かすことが出来ます。まずは、縦ノリです!椅子に座ったまま、少し足を開いて、両手を腿の上において、身体を前に倒し、腕の力で持ち上げて身体を縦に弾ませましょう!」

(え?縦ノリ!?)

先輩が手本を見せながら、数十人のおじいちゃんおばあちゃんが、一斉に縦ノリします。
初めて見る光景でしたが、皆さん初めて行う動きに、真剣に取り組んでいます。
ダンスやエアロビクスの要素を取り入れた動きをヒップホップをBGMに行う体操は、初めて見ました。

またある春の日は、今日は、「さくら、という歌を歌いましょう!さくらと言っても、皆さんがご存知の唱歌ではなく、この時期にテレビやラジオで良く流れる、若者の歌です。」と言って聞かせてくれたのは、森山直太朗の「さくら(独唱)」。

先輩は、皆さんに見やすい文字の大きさの歌詞カードを渡します。
そして、一行一行のメロディーを、練習していきます。
Aメロまで完成したら、カラオケに合わせて歌い、Bメロ練習、カラオケ、サビ練習、カラオケ…
と繰り返し、最後まで言ったら、一曲丸々を、通しで歌って完成です。

まさか、おじいちゃんおばあちゃんと、森山直太朗を合唱するとは思いませんでした。

先輩はこう言います。
例えば、子供や孫と暮らしていたりして、テレビで流れたり、家族が口ずさんだ流行の歌を、おじいちゃんおばあちゃんが知っていたとしたら、びっくりするじゃない。そして、みんなが嬉しいと思うの。

知ってる歌やなじみの歌を懐かしむのも、もちろんすばらしいけど、時代の流れに乗っている自信が生きる力になったり、音楽で家族とのコミュニケーションが出来たとしたら、最高よね。

この先輩と出会ってから、私のレクリエーションへの意識が前向きに変わったような気がしています。レクリエーションの幅が広がり、考える楽しみも倍増しました。

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