介護デザインプロジェクト

このブログでは、
介護の現場エピソードや、現在の社会問題について情報を発信していきます。

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事例集018 職業体験を受け入れて

私の勤めた施設では毎年、職業体験として、小中学校の生徒たちを受け入れていました。

学校側は、いくつかの受け入れ先から、生徒たちが興味があるものを選んで行き先を決めるのだそうです。学生たちに聞くと、商業施設などは人気のようですが、福祉施設は第一希望ではない子がほとんどのようです。

ある日の職業体験も、そのような小学6年生の生徒たちが来ました。
学校で考えて来た課題のシートがあり、『昔の暮らしはどんなだったか』『戦争のことを教えてほしい』など質問が考えてありました。ということで、まずは、隣に座っておしゃべり。

緊張しながらも、自己紹介から部活動の話をしたり、一生懸命話をしてくれています。というか、その緊張を察して、おじいちゃんおばあちゃんが気を使って話してくれている。といった様子でしょうか…さすが年の功。

まだまだ硬い表情だったので、一人の子に「皆さんと話してみてどう?」と質問してみると、苦笑いで、「色々考えて来たんですけど、何を話していいか分かりません。」と返事が返ってきました。
微笑ましいな。と思いながら、その思いをしっかり受け止め、お話タイムは終了。
聞きたいことが十分聞けなかったみたいだな、と思いながら、「大丈夫、自然に話してくれるから。」とだけ伝え、次の作業へ。

おばぁちゃんたちと一緒に昼食作りをしてもらいました。

女の子たちは「お母さんの手伝いをしているからできる!」と、緊張もほどけてやっと笑顔です。まずは大根の皮剥き。ピーラーを手にした女の子はしゅるしゅると、手慣れた様子で皮を剥いていきます。
おばぁちゃんはそれを見て、「あら、偉いわね。でも、昔はこんな器具なかったのよ。みんな包丁よ。」と、包丁を使って綺麗に剥いていきます。
女の子たちは「すごい!!」と驚きながら、おばあちゃんから方法を教えてもらっています。

次はその大根を千切り。大きな大根を目の前に、女の子は千切りのやり方が分からず固まっています。その隣で、おばあちゃんは、大根を5センチほどの長さに切り分け、端から手早く千切りにしていきます。

その様子を見ていた子たちは感動!
「すごい!千切りってそうやって切るんだ!!今度家でもやってみる!」と、ニコニコです。

作業がひとしきり終わり、おばぁちゃんが話し始めます。
「昔は今のように調理器具も便利なものはなかったし、食べ物だって、今のスーパーやコンビニみたいに出来合いのものが並んでいる訳ではなかったし、今の人はいい世の中に生きてるわよ。ご飯もスイッチ一つで炊けるしね。」
そんな話から、「ごはんはどうやって炊いていたんですか?」「お釜ってなんですか?」と、自然と質問に。おばぁちゃんも、それに答えるのと同時に、昔の贅沢品の話や戦争時代の食生活を話してくれました。

作業を通して徐々に打ち解けていく様子が分かりました。

午後は、おやつ作り。
今度は、女の子たちの出番です。おばあちゃんにパンケーキの作り方を教えてくれます。
一緒にホットケーキミックスを混ぜたり、ホットプレートで焼き具合を確認したりして、楽しそうに作ってくれました。

みんなで作ったおやつを食べながら、雑談タイム。まるでお互いに孫や自分のおばあちゃんと話をするように、もう仲良しです。


体験の時間が終わり、最後の挨拶。
「最初は緊張したけど、一緒にご飯とか作ってたら、自然と話が出来て嬉しかったです。」
「私、大根の千切り、家で絶対やってみます!」
「また、夏休みに来てもいいですか!すごく楽しかったです!」


きっと、学校で体験先を決めたときは、第一希望の体験先でなくがっかりしたかもしれません。モチベーションもそんなに高くなかったでしょう。

でも、だからこそ、福祉施設を知ってもらえるチャンスだったのではないかと思います。
高齢者の方と話をすることの難しさを感じ、それを打開する為の方法を少し学んでもらえたのかなと思っています。
その上で、楽しかった、また来たい、と感じてもらえたことがとても嬉しく思います。

体験した学生たちの中で、福祉の仕事に興味を持ってくれる生徒が一人でもいてくれたら嬉しいですね。

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事例集017 夢のような本当の時間

ケアハウスに勤めていた頃、廊下の片隅に丸いプランターが一つ置いてありました。
はじめは観葉植物かな?
と思っていましたが、それが実は、入居者の女性Sさんが心を込めて育てていた月下美人だと教えてもらいました。

Sさんは70代で性格は明るくお元気ですが、パーキンソン症状があり、いつも足を引きずって歩いていました。
スレンダーで背が高く、おしゃれな眼鏡に真っ赤な口紅、いつもロングスカートで上品な奥様。そんな雰囲気です。

季節的には、だんだん今頃のように暖かくなってきた頃のことです。
その月下美人に一つだけつぼみが膨らんで来て、甘く優しい香りが廊下中に広がりました。

しばらくして、もう今日には咲き始めるかもしれないという日。

私はたまたま遅番でした。
遅番の仕事の終了間際、館内の見回りをしていました。

廊下を通り過ぎると、なんと白くて優しい花がふわっと咲いているのです。
月下美人は夜にしか咲かない花。しかも年に1〜2回しか咲かない花。

あまりの綺麗さに立ち止まってしばらく見ていると、遠くからエレベーターの開く音が聞こえ、Sさんが歩いて来ました。

ほとんどの方がお休みになっている時間ですが、気になって見に来たんですね。
しーんとした廊下で、二人で小さく「咲きましたねー!!!」と喜びを分かち合いました。

しばらく二人で、そこに椅子を並べて眺めていると、Sさんがぽつりぽつりとご自分の昔話を始めました。

昔は飲み屋のママさんをしていたこと。
結婚をしなかった理由。
病気をして、ここに入居することになったこと。

普段は聞くことの出来ない話ばかりでした。

しばらくSさんとお話をしているうち、
またエレベーターの開く音が聞こえます。

今度は、Sさんとは違う階に、奥様と二人で住む男性Mさんです。
月下美人の花を見て、「やっぱり!」とおっしゃり、すぐに「二人ともちょっと待ってて!」と部屋に戻っていきます。

なんだろう…と待っていると、Mさんはあるお酒を片手に現れました。

「この前福井に旅行に行った時に買って来たんだよ!もうすぐ咲くと思ったからさ。」と。

ラベルには『月下美人』と書いてあります。
福井の日本酒だそうで、花が咲いたら呑もうと思っていたのだそうです。


「うちのやつはもう寝ちゃったからさ、せっかくだから3人でのもうよ!」とMさん。
「じゃぁ、1杯付き合うわ」と、Sさん。

私はというと、タイムカードを切り、制服から私服に着替え…宿直のおじさんに経緯を説明。
おじさんも(しかたないな〜)と言うフリを見せながら私にウインク。


一夜限りの花見酒。
昔話をしたり、私に人生のアドバイスをくれたり。
Mさんの話を聞きながらお酒を注ぐSさんの姿を見ていると、昔の飲み屋のママさんの姿が少し想像できました。


ほろ酔いでお開き。
「うちのやつには内緒な!」とMさん。
ほんの少しの時間でしたが、月下美人がくれた最高の夜でした。


次の日には、月下美人はつぼんでいて。
夢のような、ほんとの話です。

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事例集016 高齢者虐待のニュースから思うこと

3月31日、記憶にも新しい高齢者虐待に関するニュースがありました。

[名古屋市の介護施設で男性スタッフ3人が、90代の女性の鼻の穴に指を入れたり、口の中に手を入れ、
いやがる姿をスマートホンで動画に撮影、LINEで共有していた]というニュースです。

施設の社長は「悪ふざけをしたのだと思う」と、話していたそう。
悪ふざけ!?

この出来事のどこが悪ふざけなのでしょうか?
事件です。
弱いものがいやがる姿を楽しんでいる。そしてそれを共有している。
まるで、昨今の学校で起こっているいじめと似たような、精神の未熟さを感じました。

そして最近、こんなニュースもありました。

[NPO法人全国抑制廃止研究会の調査で、高齢者施設の17%が虐待を認識していた。職員が不足するほど虐待が多くなる傾向にある]というニュースです。

私たちの仕事は、最も人材不足に苦しんでいると言われています。

求人を出しても応募が来ない。応募が来ないから、誰でも来るもの拒まず状態で受け入れてしまう。働きながら学んでもらおうと思っても、十分な教育の時間がとれない。

介護の仕事に適正がないのでは?と思っても、人が足らない為に居てもらうしかない。

このような悪循環の中で、一番苦しむのは誰でしょうか?

これから介護を考える世代の多くに、
・親の世代からの意見⇒「子供たちには迷惑をかけたくないから、施設に入りたい。」
・若い世代からの意見⇒「うちの親は、迷惑かけたくないから施設に入りたいと言ってる。」
という家族が増えているそうです。

施設への需要は高まっている中、実際に働くスタッフは前述したニュースのように未熟なスタッフが増えている
さらに、国のこれからの介護の方針は、入所ではなく在宅介護支援に力を入れていく方針です。

いざ自分や家族に介護が必要になった時、初めて見えてくる施設の現状や介護保険の内容。
施設って実際はこんななの!?こんなはずじゃなかった!どうしたらいいか分からない!
介護の現場に居ると、そんな戸惑いの声がたくさん聞こえて来ます。

それに、職員が不足するほど虐待が増えていると言われている中、もし自分の親がニュースに出たような虐待をされてしまったならばと考えると、後悔そして自分自身を責めてしまうような気がします。

「介護」はだれもが他人事ではありません。
人生設計をするように、自分と家族を守る為に、これからのことを若い世代から考えていかなくては行けないのではないか、そう思います。

介護現場にいる私たちだから伝えられること。
介護を経験した人だから伝えられること。
ひとりひとりが小さな輪を広げていくように、介護の世界の現状を正しく伝えながら、これからの時代における介護について、考えて行きたいですね。

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事例集015 家族の本音

デイサービスを利用していた90代の女性、Sさん。

認知症で物忘れがひどく、何度も同じ話を繰り返します。

難聴があり、耳元で大きな声で話しかけないと聞こえませんし、話し言葉がとても大きいので皆がびっくりして振り返ります。

Sさんは明るい性格で、歌が大好きです。

「昔は舞台に上がって歌を披露したもんだ!はははー!」
と言いながら、お得意の十八番"さざんかの宿"を熱唱します。

しかも歌の歌詞通りに…♪曇りガラスを手で拭いてあなたあしたがみえますか〜と、身振りをつけて歌います。

難聴のため、音程をとるのが難しく、何とも笑わずにはいられない愛らしいオンチ具合で歌ってくれます。
しかも大きな声で。繰り返し繰り返し。

最初は、笑って聞いていて下さる人たちも、そのうち(また始まったよ…)と言うように苦笑いです。

そんなSさんは息子さん夫婦やお孫さんと、大きな家に住んでいます。

ご自宅では、大きな家に響き渡るような大声で歌ったり、
「ちょっとちょっとー!」とお嫁さんを大声で呼んだりするものですから、お嫁さんはその声を聞くだけでも疲れる…と、疲れ果てている様子でした。

ご家族の介護負担もあり、デイサービスに通い、ショートステイも利用していましたが、さらに特別養護老人ホームに入所希望の申し込みをされていました。

お嫁さんは良く冗談まじりにこんなことを言っていました。

「わーわーしゃべってないで、デイサービスでは少し静かにしゃべるんだよ!」
「早く特養の順番が回って来たらいいのに…」


特別養護老人ホーム(特養)は、全国で待機者数50万人以上と言われています。数年も待っている方がいるほど、入りたいと思ってもすぐには難しいのが現状です。
お嫁さんも、それを分かっていらっしゃいました。

しかし、申し込みをして数ヶ月。
早いタイミングでSさんに、入居の順番が回って来たのです。

お嫁さんはその知らせを聞いて、びっくりしていたのと同時に、ほっとされた表情を見せていました。
それを見て私たちも、良かったな、と思っていました。


デイサービス最後の日。
挨拶もかねて、Sさんをご自宅にお送りしました。
Sさんは今日が最後のことを知って知らずか、「どうもねー!」と家に入っていきます。

お嫁さんと二人になり、

「今日でデイサービス最後でしたね。ありがとうございました。特養でも元気にお暮らしになるよう心からお祈りしています。」
そう声をかけました。

するとお嫁さんが、

「いやね、今までは、早く順番来ないかなーってほんとに願っていたんですよ。うるさいしね。でも…」

とおっしゃいます。そして、徐々に涙ぐみながら

「これで良かったのかなーって。まだ家に居られたんじゃないかなって。本人は家に居たいんじゃないかなーって。親の世話を放棄したような気にもなってきて。色々考えてしまってね。でもこの機会を逃したら、またいつまで待つのか分からないでしょう?本当にこれでよかったんでしょうかねぇ…」


予期せぬ言葉でした。あんなに入居を心待ちにしていたのに。
その時その状況になってみないとわからない、複雑な想いだったのだと思います。

この本音に、皆さんならどう答えますか?

お嫁さんやご家族の決断にも、この本音になんと返事をしようとも、人を想う気持ちに正解はありません。
ただ、相手のことを思い考えるその心、その時間こそが大切なのではないでしょうか。
私はそう思います。

Posted by おこないちかこ on  | 0 comments 

事例集014 人に優しく

浦安市にあるコンビニエンスストアで、実際に見た光景です。


私の前に並んでいたおじいさんは、お弁当とお茶を買おうとしていました。
レジには若いバイトのお姉さん。

「560円になります。」

おじいさんは財布を広げますが、
「あれどうだったかな…」
といいながら、もぞもぞしています。

後ろに並んでいた私は、すぐに「あれ?」と、思いました。
おじいさんは、支払いの仕方が分からないようです。


私は急いでいなかったので、どうするんだろうと思いながら見ていると、バイトのお姉さんが私に向かって

(すみません。少しお待ちください。)といったように頭を下げました。


そして、おじいさんに話しかけます。

「お財布の中、失礼しますね。」
と、おじいさんの財布から小銭を取り出し、自分の手のひらにのせ、500円玉と50円玉と10円玉をみせて、
「560円頂きますね。」

そう確認し、とても時間はかかりましたが、無事におじいさんは、買い物を済ませることが出来ました。

(いい店員さんだなぁ…よかったね、おじいさん。)、と感心しながら見ていましたが、その後、帰りかけたおじいさんの行動が、待たされている私にとってはなんだか面白くて、いい場面だなと思いました。


おじいさん「あれ?そう言えば、いつもいる髪の長い女の人、最近見ないね。」

お姉さん「あ、辞めてしまったんですよ。」

おじいさん「そうなのか、残念だな。じゃあ、あんたが古株かい?」

お姉さん「そうなりますかね。」

おじいさん「よろしくね。」


後ろに私が並んでいることは、おじいさんには全く意識できていない様子でした。

(おいおい、おじいさん、後ろに並んでる人がいるんだよ〜。世間話かい〜。)

と、ちょっぴり思いながらも微笑ましい光景に癒されていました。


店員さんの対応に、おじいさんの世間話。
このおじいさんは、この地域で暮らしているんだなと、そう思いました。


この日は、急いでいなかったので、この場面を微笑ましいと思えたのだと思います。
しかし急いでいたり、理解しようという意思がなかった場合、この場面を微笑ましいと思えたでしょうか?


人を思う時、自分の心や行動に余裕があることがいかに大切かが分かった気がしました。


私は今まで、”高齢者や認知症の方が地域で暮らし続けるために出来ること” について、地域で勉強会をおこなったりして来ました。


勉強会の場で
は、『資格があるから、せっかく勉強したんだから何かをやらなくてはいけない、ということではないということ。理解する、見守る、応援する、伝える、など、自分に出来ることを意識してもらえたらそれでいい。』そう話していました。

コンビニで出会った出来事から、ここにもう一つ付け加えようと思います。

それは…

”自らの心・行動に余裕を持った暮らしを心がけること”

いつもより少しだけ多く人に優しくできる気がします。
私たちの全世代が支え合って暮らし続けるために、出来ることから始めたい、そう思います。

Posted by おこないちかこ on  | 2 comments 
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